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アユという魚、必要ですか? [その他養殖魚(アユ)]

アユといって知らない人はいないですよね。渓流魚の中でも頂上に君臨する魚で、その美しい姿から「清流の女王」として多くの釣りファンを魅了してきています。歴史的にも、古事記にも記載されていたほどの魚で、神武天皇の即位を予見し、吉兆を呼ぶ魚といわれたそうです。神巧皇后は戦の前にアユを釣り、戦争の行く末を占ったといわれており、アユの魚編の隣にある「占」の文字はまさに「占う』という意味からも、そうした「吉兆を呼ぶ魚」としての意味合いが強いと言えます。

その美味しさについても、言う迄もありません。古くは「アユの熟れ寿し」等が保存食として北関東等でも食されてきましたが、現在では「アユの塩焼」が行楽地やバーベキュー等でも定番のアイテムです。地方の簗場、ドライブインでもかつては多くのアユを塩焼にして行楽客に提供、串に売ったアユにかぶりつく子供たちの姿をどこにあっても見ることが出来ました。

まさに「アウトドア」のイメージで「夏の魚」である訳ですが、その一方で産地では甘露煮に加工し、正月商材としてアユの甘露煮や昆布巻き等として販売され、冬場の需要が大きい魚でもあります。稚アユを甘露煮にした「飴炊き」は高級な佃煮として消費されますし、甘露煮は昆布巻き等としても珍重されます。

でも、そのアユがドンドン減産しています。これは養殖そのものが難しい訳ではなく、「売れない」のです。普通、魚には「消費量」というものがあり、それ自体はあまり大きく変動しません。供給量が消費量を超えれば相場は下がりますし、消費量を賄いきれなければ相場は上がります。

アユに関して難しいのは、生産量が減っているにも関わらず、相場が一向に回復しないことにあります。通常、作り過ぎて相場が暴落した場合でも、ある程度生産量が減ると相場は底を打ち、相場回復すると共に、生産量も安定します。しかし、ことアユに関しては減産しても相場に底打ち感がみられません。底打ち感が無ければ生産量は回復しませんし、生産者は更に転廃業を余儀なくされ、生産量は更に減少してしまいます。

かつては1万㌧を優に超えていた養殖アユの生産量ですが、今では6000㌧を割り込む状況となっております。それでもなお、昨年は生産者にとって史上最低の相場を付ける等、状況は一向に改善しません。一体どこまで生産量が減れば良いのでしょうか、生産者の苦悩は尽きません。

こうした状況を招いた要因もある程度分かっております。皆さん、スーパーの売り場でアユを見た時にどんな姿をしていますか?多分、アジと同じようにトレーにドスンと載ったままですよね。でも、皆さんが食べる時のイメージは串打ちした塩焼アユですよね。このギャップが大きいと思います。皆さん、そのままトレーに載ったアユを持って帰って、串打ちして焼いて食べますか?精々串を売ってあるものを家で焼き上げるか、串を売ってある程度焼いたものを家で温め直すかですよね。

では、「そこまで分かっているのならば、串を打ったり、焼き上げたアユを販売すれば良いだけではないのか」という声が聞こえてきそうです。しかし、それが出来ません。なぜかというと、「串打ちアユ」や「串打ちの塩焼アユ」は「高くて売れない」のだそうです。「売ってみなければ分からないのに」とも思いますが、なかなかスーパー・量販店さんはのってきません。アユはいつも鮮魚売り場にばかり並んでいますが、惣菜コーナーで販売しても良いのではないかと思っています。

何故そうしないのか、やはりバイヤーの頭の中でアユは「アジ」と同じ感覚で取り扱われているのでしょう。アジが高いとアユを売り、アユが高ければ「アジで構わない」という傾向が強く感じられます。築地市場でも、アユが売れた時は「シケでアジが獲れない」時だったりします。淡水魚のアユと海産魚のアジが競合するようなおかしな状況のままでは、アユの存在感はしっかりしたものとはならないでしょうし、いくら生産量が減っても相場が回復することは無いような気がします。

スーパーのバイヤーにとって、「アユ」は無くても構わない魚なのでしょう。このままいけば、量販店で売れるような商材では無くなってしまいます。そうした時に、消費者も「別にアユを食べなくても構わない」となるのでしょうか。

もうすぐアユのシーズンが始まります。
6月には全国の主要河川で一斉にアユ釣りが解禁となり、シーズン本番に入ります。

アユという魚、日本人にとって本当に必要ですか?

写真は出荷前に養殖場の選別台で選別されるアユと独自の木箱で出荷されたアユ。その下3枚は「小アユの飴炊き」(滋賀・西友商店)や「アユの熟れ寿し」「アユの甘露煮」(滋賀・鮎郷)。通常の甘露煮のイメージとは全く違い、アユならではの絶妙な味わいを楽しめる。
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