「蒲焼店が考える“これから”」25 〜2014年10月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]
渡辺安良取締役社長
(つきじ宮川本店/東京都中央区)
『資源保護、出来る事は”天然ウナギを買わない、 扱わない“』
今年も残すところ、2ヶ月余となった。秋も深まり、肌寒い日もあるなど、夏の好商いが懐かしいぐらいだ。オフシーズンのなか、例年のごとく消費も落ち込んでいる状況だ。今年は振り返れば、業界内外を震撼させた”絶滅危惧種“の報道によるインパクトはとにかく大きかった。
「やはり、“ウナギがもう食べられなくなる”という危機感を持ったお客様が多く見受けられるなど、駆け込み需要はあった感じでした。とくにIUCN(国際自然保護連合)がレッドリストにニホンウナギを絶滅危惧種として登録した6月頃から忙しくなりました。その後、7、8月と続き、また9月は“20%削減”という例のニュースの影響もあり、“天然ウナギは食べられないの?”など心配するお客様もいらっしゃり、6、7,8、9月、そしてこの10月もまずまずの動きを見せています。当初、夏の反動が懸念されていましたが、それほどまでの落ち込みはないです」
ところで今月30日には、全日本地蔵的養鰻機構の設立総会が行われるなど、ウナギ資源保護・管理の動きが急ピッチで進んでいる。
「天然ウナギを買い上げてそれを放流するなど様々な働きかけが進んでいますが、私ども専門店としてはやはり、天然ウナギを“買わない”“扱わない”ぐらいですね。昨今のウナギ資源保護の動きからも、向こう10数年は天然ウナギの扱いも難しくなりそうですね。私どもでは4〜5年前ぐらいまで天然ウナギを扱っていたのですが。天然はピンキリでしたが、当時はやはりお客様には喜ばれましたね」
ウナギ資源の保護・管理が進む一方、その影に隠れてしまっているのがウナギ職人不足問題だ。
「私ども本店に6人、他店も含めると合計20名の職人さんを抱えており、平均年齢は50代です。札幌店では毎年10代の若い職人を入れていましたが近年は集めづらくなっています。将来、職人が少なくなり、お店の規模縮小などの危機感はありますが、正直、対策が進んでないのが現状です。人、職人を育てるのはお金がかかりますし、“会社規模でしっかり育てる”ことを考えると鰻屋ではなかなか難しい面もあります。またここ数年は、シラスウナギの漁がどうなるか?ウナギ完全養殖の商業化となるのか?それぞれ、状況を見ながら体制を変えていく事も大切です」
最後に今後、鰻屋はどのような未来をむかえるのだろうか。
「前述しましたが、シラスウナギ漁の件も合わせて、近年のウナギ資源の不安定さを考えると、これまで以上に採算を重視していくことで、こじんまりとした商売になってしまうのかな、とふと思ったりもします。具体的に“ウナギ資源はこれだけ。だから価格はこの水準になる”といったように“商売としての形がある程度、構築されてしまい、商売の形も様変わりしてしまう懸念があります」
LINE、Facebookなど SNSを通じた鰻屋さん同士の交流については?
「全国各地の鰻屋さんが一堂に会す事は大変ですが、そうしたツール等のやり取りは容易でしょうし、場合によっては言いたい事も気軽に言えそうで良いのではないでしょうか」
[データ]
「宮川本店」
〒104-0045 東京都中央区築地1-4-6 宮川本店ビル
tel:03-3541-1292
*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中