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「蒲焼店が考える“これから”」88 〜2016年12月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


荒尾正樹代表取締役
(銀座 鳴門〈上野松坂屋店〉/東京都台東区)

「職人確保は週休二日、有給、残業、福利厚生の充実」

今年も早いもので、残り1ヶ月を切った。秋を通り越し、一気に冬らしい寒さに見舞われるなか、消費も一段と冷え込んでいる。毎年、訪れるオフシーズンのなかで、8月までの高値相場が影響し、消費者のウナギ離れを起こすなど荷動きの悪さを引きずり、現在に至っている。専門店において気になる売行き、そして利益率はどのように推移しているだろうか。

「私どもでは夏以降となる9〜11月の売り上げは昨年対比10%増と好調です。ただ、利益率は一昔前に比べると相当、圧迫されています」

多くの専門店では夏以降の売行きの急激な落ち込みが目立っている話が目立っていただけに、健闘しているようだ。ただ、仕入れ値は依然として高水準にあるだけに、利益率は圧迫されているようだ。一方で、販促、あるいはインバウンド対策等は行なっているのだろうか。

「百貨店では夏にチラシ、新聞、テレビを使って販促していただいています。ウナギ以外でも、何らかのイベントがあれば集客も増えますので売り上げも上がります。ちなみにインバウンドに関しては、百貨店内に通訳の人がおります」

ところで、良い鰻の定義、あるいは貴店で扱っているウナギに関して、国内で現在、流通している国産、台湾産、中国産とあるが、どのようなこだわり、あるいは考えを持っているのだろうか。

「ウナギに関しては柔らかく、脂の乗ったウナギが良いと思います。また、扱う鰻については百貨店の意向もあり、当店では国産しか扱っていません」

ところで近年は、ウナギ資源の厳しい現状が大きく取り沙汰されている。懸念されたワシントン条約に関しては今回、掲載回避となったが、2〜3年後に再び行なわれる。次回に関してはかなり旗色が悪い事も確かだ。ニホンウナギの見通しは決して明るくないなか、資源問題に関してどのようなご意見があるだろうか。

「稚魚、天然ウナギをとって生活している人たちがいるなかで、“採るな”と言うことは難しいことだと思います。ただし、ルールを守らない人は別ですが。とにかく、ウナギ完全養殖の商業化に期待しています」

業界に重くのしかかるウナギ資源問題の一方で、同じくらい重要なのが、ウナギ職人不足。この件について、現在はどのような考えを持っているだろうか。

「当社は、ウナギ職人不足に陥っていません。週休二日、有給、残業、福利厚生の充実、能力給制度にすることが大切。早く割けたら“●●円”などで若い人にやる気を出させるブラック的なウナギ屋根が目立つ感じです。一方では“ウナギがいなくなる!”などマスコミの過剰な報道も気になるところです」

前述のように、あらゆる場面で様々な問題を抱えた状況にあるウナギ業界。資源問題は無論、職人問題、相場の高値安定によるマーケットの縮小など、どれも厳しいものばかりが目の前に立ちはだかる。そうした状況下、うなぎ専門店としては今後、どうあるべきだろうか。

「当店は百貨店の中なので、なかなか自分の思うように出来ない事も多々あります。しかしながら、今出来ることを一生懸命にやるしかないと思っています」

[データ]
「銀座 鳴門<上野松坂屋店>」
〒110-0005 東京都台東区上野3-29-5
電話:03-3832-1111(内線:3845)

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*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中

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