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「蒲焼店が考える“これから”」94 〜2017年3月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


斉藤 太治専務取締役
(ゑびす家/東京都葛飾区)

『技術継承をしっかり、より多くの人に鰻文化を伝える』

早いもので3月に突入、春到来も刻一刻と迫って来た。業界注目のシラスウナギ漁について、先月26日の“闇の大潮”は期待するほどシラスは採れなかった感じだが、日本においてシラス池入れは早い段階で進んでいたことから、そこまで悲観すべきではないだろう。
ところで、気になる専門店の販売、そして利益率はどのような状況だろうか。

「シラス不漁が続いたとき、メディアによる相次ぐ報道によって “うなぎは高いもの”という認識が消費者間で急速に広まるなか、当店でも鯉の洗い、鯉こく、四つ切りのミニうな重をセットにした、お得メニューがよく出ました。その後はスーパーで販売されるうなぎ蒲焼との価格差がなくなっていた事、かつお客様もこれまでの高値にある程度なれてきたのか、昨年の夏前ぐらいから、うな重(2,800円/1本付け)が出るようになりました。それまで、シラス不漁により仕入れ値が上がったときは他の商材でうまく調整し、メニュー価格はそのままに、ウナギ蒲焼の規格を変えるなどで対応していました。ちなみに近年は、土用丑の日に合わせて伊勢丹松戸店で鰻を販売していますが一昨年、昨年とおかげさまで売り上げを更新しています」

観光地である柴又での海外観光客の現状、また販売についてはどうだろうか?

「この柴又は、インフラ整備も整っていませんし、街自体のキャパも小さいですから、それほど多くない感じです。中国人などの爆買いは見られませんし、春節の時期も多い感じはなかったです。販促に関しては、京成電鉄の下町周遊きっぷ(京成線都内エリアが一日乗り降り自由)とタイアップして、集客効果に努めています。また当店では、刺身、天ぷら等もお出ししていますが、今後はウナギを重要視し、より前面に押し出して他店との差別化を明確に出していきたいですね」

ちなみに良いウナギとは?

「個人的には、“香りのよい”うなぎですかね。白を入れている時が一番、わかります。雑な香りもせず脂の質が良いのが好みです。特に皮目を焼いている時に落ちる脂の香り等、良いウナギの場合はたまらないですね」

ところで、昨今のウナギ資源保護問題についてはどのようなご意見があるだろうか。

「適正価格での商売を望む中、ウナギ完全養殖の商業化を願いたいですね。また今後のワシントン条約に関しては、附属書に掲載されないよう、水産庁にはぜひ、頑張っていただきたいと思います」

一方のウナギ職人不足についてはどうだろうか。

「現在、当店では若い職人がおり、“今すぐ、どうのこうの・・・”というわけではないですが、将来的にはやはり調理師会に頼ることなく、自社育成を目指していきたいと考えています」

専門店を取り巻く状況は大きく変わる中、今後はお店としてどうあるべきか?

「これまで代々、伝わってきたこのウナギ蒲焼は、“いかに美味しく召し上がっていただくか”、という先人達の技術の粋を集めたもので、独自性の強い商材だと思います。それだけに私どももしっかり、基本に忠実に技術継承を行い、出来ることなら適正な価格水準に戻しつつ、文化をしっかり伝えていくため、ハレの日に限らず多くの人にウナギを召し上がっていただくことも大事だと思います」

[データ]
「柴又帝釈天 ゑびす家」
〒125-0052 東京都葛飾区柴又7-3-7
電話:03-3657-2525

斉藤太治専務(ゑびす家).JPG

















*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中

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