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鯉の消費拡大と魅力を考える① 平成28(2016)年3月5日号掲載 [本紙記事/速報]


供給は社会的責任 海外に向けた発信も必要

かつて国内で2万t強の生産・漁獲量を誇ったコイ(天然含む)。中華料理のメインディッシュとして丸揚げが人気を博したほか、値頃感からスーパーでも洗いが販売されていたが、10数年前に発生したコイヘルペスの直撃を受けて以来、生産量は減少傾向にあり、消費も低迷。厳しい状況が続いている。ただ、末端の鯉料理店ではこれまでにない斬新なメニューを開発するなど、消費の回復に向けて対策を講じるところも出ている。本紙では今号でさいたま市見沼区の老舗問屋「鯉平」を訪ね、清水良朗代表取締役に、伸び悩む消費を取り戻すための方策やコイの魅力などについてお話を伺った。

さいたま市見沼区にある「鯉平」は1897(明治30)年に創業。およそ120年もの長い歴史を持つ、コイやウナギ、スッポンなどの淡水活魚や水産加工品の卸売をメインに行っている老舗の専門企業で、さいたま市大宮区では川魚料理店「かのうや」も展開。店内は日々大勢の利用客で賑わいを見せている。

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「エリアとしては主に地元の埼玉をはじめ、東京や神奈川が中心ですが、地方への発送も行っています。また、活魚はもちろんですが、委託加工にも力を入れています」。
清水社長は流通エリアについてそう説明する。
ただ、「当社の仕入れ販売量は安定しているので衰退とまではいかないにしても、全国の生産量は減少傾向にあり、数字には消費が落ち込んでいるのが表れています。次から次へとコイが売れているということもありませんしね」と話すように、やはり消費の低迷は喫緊の課題となっているようだ。

また、品質面については「かつて群馬県では養蚕が盛んに行われ、サナギをコイの餌として使用していたことから、群馬県はコイの主要産地となっていました。しかし今では餌が配合飼料に変わったこともあって、全体的に品質面でも昔と比べてやや劣化している部分が確かにあるかもしれません」と、以前よりも劣化していることを示唆した。

「最近になって、改めて餌である配合飼料を見直そうという動きが出始めてはいます。しかし生産者も後継者が少なく、いたとしてもなかなか積極的に後を継ごうとしません。こうしたことも危機的状況を招いている原因といえるのではないでしょうか」。
清水社長はそう話し、後継者不足も切実な問題であるという考えを示した。

加えて、飼料代の高騰も深刻な問題となっている。これについて、営業部の小野寺光樹次長は「魚価を高くするのはもちろん簡単ですが、高くしてしまうと当然売れません。やはりその魚に見合った価格帯で販売していくことが大切です」と、安易に価格を上げられないことを強調。卸先から品質面についての要望が寄せられることもあるが、小野寺次長は「脂が乗っていることは言うまでもありませんが、なるべく大きいサイズのコイを提供することを心がけています。大きさに関する要望が最も多いですから」と、細かな気遣いを見せた。

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一方で、低迷している消費をいかに拡大させるかは長年の課題となっている。そのために何をすべきだろうか。
「大体の割合でいうと、二割のお客様は『コイが好き』と答え、二割のお客様は『コイはあまり好きではない』と答え、六割のお客様は『コイって食べられるの?』と思っています。別の言い方をすれば、まだ六割ものマーケットをこれから開拓できるということです」。

清水社長はそう話し、まだマーケットの開拓が十分に可能であることを強調。また、「コイというと洗い、旨煮、鯉こくが定番料理ですが、これだけでは不十分でしょう。コイ自体のおいしさをアピールすることは大事ですが、そのためにはやはり新しいメニューを考えることも必要だと思います。コイを好きではないお客様からは『泥臭いイメージがある』『骨があって食べづらい』という声を聞きます。末端の飲食店が泥臭いコイを出さなければいいですし、骨を丁寧に取り除けば解決する問題だと思うのですが、飲食店がそれを怠っているような気がしてなりません」と、コイ料理を提供する末端の飲食店の努力が必要だという姿勢も示した。同時に「まずは消費の維持・拡大の問題が最優先です。コイが今まで以上に注目されれば、生産者も必然的に生産量を増やしていくはずです。そうした旗振りは当社のような問屋でないとできないのではないでしょうか。供給は社会的責任ですから、私たちのような問屋の責任ももちろん重大です」と強調する。

「昔は中華料理のメインディッシュとして〝丸揚げ〟のメニューで食されていたので中国ではもちろんですが、アジアではパキスタンやバングラデシュ、ヨーロッパではルーマニアやドイツなど、世界を見渡せば確実にコイを食べる文化があります。日本のコイ料理をもっと前面に押し出すことで海外にも間違いなく受けると思います。私たちがそういう努力をしていくべきでしょう」。
清水社長は海外に向けた発信の必要性も訴えた。

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