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「蒲焼店が考える“これから”」108 〜2017年8月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


川口治彦代表取締役
(古蓮/福岡県柳川市)

『柳川の掘割にウナギ稚魚が復活している』

業界の大イベントである“土用丑の日”(7月25日、8月6日)、2017鰻年度を締めくくるお盆を終えて、うなぎ業界はほっと一息ついている頃だろうかく。今シーズンはエリアによって猛暑もあれば、梅雨戻りのような天候不順、この8月も東京に至っては2週間以上続く雨など異常気象に見舞われている。
ところで、昨今の活鰻仕入れ値は先月末に値下がり、今月に入ってもすでに二度、下方修正されるなど、先安感が強まっている。ただ、一昔前に比べればまだ高い価格水準にあるなか、貴店の販売状況をこれまで振り返ってどうだろうか。

「この柳川地区では、名物であるうなぎめし(せいろむし)の評判が広く知られているのか、観光地・柳川のお手伝いも出来ているように思われます。まだまだ高値ではありますが、昨年に比べると値段も少し下がっており、また利益率は数で補っております」

一方、近年続いた仕入れ高など取り巻く販売環境が厳しいなか、貴店では販促、インバウンド対策など、どのような働きかけを行ってきているだろうか?
「柳川地区もここ数年、インターネット等のおかげもあってか、外国人のお客様が数倍に増加しております。言葉には、アンケート(外国人観光客)の結果、“やさしい日本語で対応してください”との事ですので安心しております」

ちなみに商売を行っていく当然のように大切な活鰻原料。貴店のウナギに対するこだわり、あるいは良いウナギとはどのようなものなのだろうか。
「以前は、中国産など品種で非常に嫌われており、組合(柳川うなぎ料理組合)では、100%国産(宮崎、鹿児島県産)を使用しております。最近ではフィリピン方面からのうなぎが紹介されておりますので、業者の方々には少しでも安く品質の良いうなぎを揃えていただければと思っております。なお、扱いサイズは3.5尾〜4尾です」

ところで近年は、環境省、またIUCN(国際自然保護連合)、そして台湾の林務局でもニホンウナギを絶滅危惧種に指定されるなど引き続き、気になる資源問題があるが、貴店ではどのような考えを持っているだろうか。
「完全養殖の商業化、天然ウナギの復活、そして使用などはまだまだ数十年先だと思われます。柳川では、高校の生物部と九州大学のゼミが行ったモニタリングで掘割にウナギの稚魚が復活しております。全国の行政がもっと厳しく乱獲を抑え、保護に取り組んでほしいと思います」

同様に、大きな問題として再三、取り上げられるウナギ職人をはじめとした人材の問題に関してはどのような思いがあるだろうか。
「ウナギの不漁が続いているここ数年、当然のごとく、価格も安定していません。2代目、3代目が安心して、継げる商売でありたいものです」

近年、ウナギ業界には資源、人材、相場問題など多くの問題がある。そうしたなか、鰻専門店としての考え、あるいは今後どのように乗り切るべきなのか、あるいはどのようなことが必要だろうか。
「今では、和洋折衷で食が乱れております。日本の代表的なウナギは、昔からの食文化として多くの人に親しまれてきました。これからも、各店が自信を持って美味しいウナギを提供していってもらいたいと思います」

[データ]
「古蓮」
〒832-0822 福岡県柳川市三橋町下百町31-6
電話:0944-72-0026

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鯉の消費拡大と魅力を考える③ 〜平成28(2016)年3月25日号掲載〜 [本紙記事/速報]


大盛況だったイベント 「鯉サミット」の企画・開催も

低迷する鯉の消費を再び活性化させようという目的で三回連続で掲載するシリーズ企画「鯉消費拡大と魅力を考える」-。最終回の第三弾では、第二弾で紹介した、「鯉平」直営の川魚料理店「かのうや」で昨年実施されたイベントの詳細のほか、第一弾と第二弾で紹介した内容も一部踏まえ、鯉の業界が抱えている課題や、消費の維持・拡大のために改めて業界全体としては何をしていくべきかなど総括的な内容について、清水社長の談話を加えながらまとめた。

淡水魚の中でもとりわけ鯉に関しては、一般消費者にとって〝どこに行けば食べられるのか?〟という疑問がある。これについて清水社長は「もしお客様から聞かれたら、鰻屋さんに行くことをお勧めしています。もっと鰻屋さんで鯉料理を扱うようになれば、別の店でも『鯉を扱ってみようか』と広がる可能性がありますが、残念ながら、まだ鯉を扱っている鰻屋が少なすぎます」と指摘。また、「ほとんどのスーパーでもロスになってしまうことを気にして販売していません。それを覚悟で販売することで定着していくと思うのですが、そういう余裕がないのが現実です」と、現状の厳しさにも触れた。

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「まずはオーソドックスなメニュー〝鯉のあらい〟から広めていくべきでしょう。『酒のつまみに鯉のあらいを』のようなキャッチフレーズで、特に人口の多い首都圏で販売するようになれば消費も広がっていくのではないでしょうか」。
そのような思いから「かのうや」の三周年記念も兼ねて開催したのが、第二弾で簡単に触れた、昨年9月のシルバーウィークの「鯉の縁日」と銘打ったイベント。小学生以下の児童を対象に、生簀からすくった鯉をその場で洗いにして味わってもらう「生簀で鯉とふれ合い&調理実演」のほか、根強い人気を誇る「鯉のあら汁」の利用客への無料配布なども実施した。参加した児童らはほとんどが初めての体験で最初は驚いた様子だったが、実際に食べてからは「初めて食べたけどおいしかった」「もっと食べたい」という声が挙がったという。

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黒田部長は「児童たちには生簀からすくった鯉の頭を叩いてしめる作業も手伝ってもらいました。最初は怖がっていましたが、周りの児童がやっているのを見て皆、次第に『自分もやってみたい』と自ら積極的に挑戦してくれました」と、改めて児童らが楽しんでくれたことを強調。また、今回のイベントを開催して以降は鯉の需要も増えたほか、イベントを見て来店する利用客も多くいるという。

「イベント告知のチラシを新聞の折り込みにいれたことも大きかったと思いますが、やはり普段口にする機会がほとんどないため、珍しいと感じたのではないでしょうか。『鯉のあら汁』についても初めて味わったお客様からは『思ったより食べやすかった』という意見が寄せられましたし、高齢のお客様からは『昔食べていたけど、やっぱりおいしい』という声をいただきました。用意した座席は満席になり、『鯉のあら汁』は多いときで一日およそ二〇〇杯出ました」。
黒田部長はそう話し、イベントの効果もPRした。

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「確かに、鯉をその場で叩いてしめる様子については、最初は子どもたちから『かわいそう』という声もありました。しかし、他の魚や肉類も私たちが食べるためには誰かがそうしないといけませんから、『命に対する尊厳』という意味も含めて魚を裂いている様子は子どもたちに見せるべきでしょう。それをしないと永遠に食べ物は残しますし、好き嫌いも増えていきます。川魚は生きているうちに包丁を入れることが原則ですから、末端の飲食店はどんどんそういうことをやっていくべきです。〝生きたものを現場でさばく〟という原点に戻ってほしいと思います」。
清水社長は子どもを相手にした「食育」も必要だという考えを示す。

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一方で、「昨年11月、全国食用鯉品評会で各地の生産者が一堂に会しましたが、どこも自分たちのことで手一杯で将来のことを考える余裕がないように見受けられました」と、業界が抱える課題についても指摘する。

「鯉はまだまだ可能性がある魚だと思いますし、消費拡大のためにはやはり生産者一人一人が『末端のお客様においしい鯉を提供したい』という意識を持つことが大切ではないでしょうか。『もっと売りたい』と情熱を持っている生産者はたくさんいるはずです。当社を含め、全国の鯉料理専門店による『鯉サミット』を企画・開催したいですね。そうした場でお互いの現状について話し合ったり、新しいメニューを味わったりすることも必要です」。
清水社長はそう話し、「情報を共有することで見えてくることが必ずある」と強調した。

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