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「蒲焼店が考える“これから”」118 〜2018年3月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


棚田 郁哉店主
(うなぎや/長野県飯田市)

「鰻にはかぶと、ひれなど捨てるところはない」

今シーズンのシラスウナギ漁は、かつてない大不漁に見舞われている。年明けから、活鰻相場はこれまでにない早さで上昇、すでにこの3月の時点で、大不漁だった2013年ピーク時の相場にほぼ横並びとなった。かつ、依然として“天井価格”とは言い切れない現状においてメニュー価格の値上げ、あるいはメニュー内容の変更などの検討はしているのだろうか。
「今までは、内税で対応させていただいていましたが、税別に変更し、消費税分の値上げを現在、検討しております。また、鰻会席の献立に鯉など鰻以外の食材を入れる事で原価を下げようと思っております」

前述のように近年は仕入れ高を背景に厳しい販売状況が続いている。現状において、販売促進や、あるいはインバウンド消費(訪日外国人旅行者)のために何らかの対策を実施しているか。 
「お店をオープンしてまだ一年ですのでまずは知名度を上げるために、パンフレットの作成・配布、また地域の食のイベントに積極的に参加しております。外国人のお客様は少ないので、今はインバウンド消費の対策は行っておりませんが、外国人が増えれば積極的に行っていきたいです」

近年、仕入れ高を背景に厳しい販売状況を強いられる一方、今夏は前半戦の“シラスウナギ不漁”から、国産新仔が絶望的との見方が濃厚のなか、貴店の国産、中国産、台湾産(※どれも同じニホンウナギ[アンギラ・ジャポニカ種])に対する貴店の見解はどうだろうか?
「以前、私どもでは、国産に関して新仔に合わせて7月頃から10月いっぱい、11月上旬からは中国産を扱って来ました。しかし、ヒネの方が『こく』があり美味しいと喜ばれますのであえて新仔にこだわりはありません」

ところで昨今は、今シーズンのシラスウナギ大不漁も相まって、これまで以上にウナギ資源問題が大きくクローズアップされている。専門店間では近年、天然ウナギ不使用の動き、完全養殖の商業化に向けた研究機関、最近では、天然ウナギの生息環境整備に関連する”石倉カゴ”設置費用に向けた募金の活動などが見受けられる中、“資源保護・管理問題”に関して、どのような意見を持っているか。
「私共の店では天然物は使用しておりません。全国的に4尾、または3尾など一つ上の太いサイズの物を使用すれば、シラスウナギの頭数は一緒だとしても、使用量が増えるのではないかと考えます」

ウナギ資源問題と同じように近年、深刻の度合いを高めるウナギ職人不足。その育成や確保についての意見はあるだろうか。
「ウナギ職人だけの問題ではなく、目指す魅力があるかないかの問題だと思います。給与、安定、労働時間など他職と比べるところはあると思います。調理の現場を見たり、技術を見てもらうことで、まずは興味を持ってもらう事がとても大事だと思います」

専門店を取り巻く環境は、周知のようにウナギ資源問題はじめ、高値安定となる価格面など一変するなかで、〝鰻専門店〟として今後、どうあるべきなのか、あるいは何をしていくべきなのだろうか。
「大変な現状ではあると思いますが、スーパーから専門店まで“廃棄”という現状が散見される中で、私共料理人に出来る事は、大衆化しない事にこだわり、鰻にはかぶと、ひれ、骨まで捨てるところもありません。ですから、資源を守るという意味だけではなく、お客様に鰻の違った食べ方を知って頂きたいと考えております」

[データ]
「うなぎや」
〒395-0001 長野県飯田市座光寺5-95-1
電話:0265-24-4350

店主・棚田郁哉.JPG

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