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「蒲焼店が考える“これから”」43 〜2015年5月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


瀬下 知也代表取締役
(うなぎ甘露煮せしも/栃木県栃木市)

『きちんとした職人のいる店が注目を浴び、安定した仕事ができることを夢見ます』

ニホンウナギが昨年6月にIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに絶滅危惧種として登録されてから、もうすぐ1年。最近は、シーズンを2ヶ月後に控え、そうした“絶滅危惧種”に関連するニュースは少ない。

「人は心理的に、“絶滅危惧種”と言われると、余計に(ウナギを)食べたくなるみたいです。ただ、“(値段が)高い、高い“と報道されると、都会はまだしも田舎では足が重くなるようです」

春先から、活鰻相場が強含んでいる。この17、18日にも愛知三河一色、鹿児島大隅地区で値上がったばかりだ。資源自体の問題も当然あるものの、それに付随して”不足感“による相場高騰問題も頭が痛い。大産地の鹿児島大隅地区もふたを開ければ思ったほど在鰻が無いとして、夏に向けての不安要素がまた一つ増えた感じだ。

「ウナギの稚魚をあれだけ採っていれば、近いうちに無くなっても仕方が無いと思います。国が厳しく、(ウナギ資源を)管理するしか方法は無いのではないかと思ってしまいます」

資源問題、そしてそれに付随して起きる相場高騰問題。その一方で避けて通れない、ウナギ職人不足問題もある。鰻屋包囲網はますます加速している。

「フレンチ、イタリアン、和食と食材を選べる職人さんと異なり、ウナギがメインで“きつい”“暑い”“儲けが少ない”となれば、職人が減少していくのも仕方が無ことだと思います。加工場の方々には怒られると思いますが、鰻屋認定制度を作り、鰻は鰻職人のいる店でしか販売出来ない、となれば鰻の乱獲も無いでしょうし、鰻職人のプレミアム価値が上がり、人気も出るかもしれませんね」

鰻業界はかつてないほど、大きく様変わりしている。期待された今年のシラスウナギ漁は昨年から一転、再び不漁に見舞われている。来年秋には、ワシントン条約締約国会議を控えるなか、資源問題が再び、大きくクローズアップされる可能性も一段と高まっている。鰻屋はこの窮状をいかに乗り切るか。昨今は、Facebook、LINEなどあらゆるSNSもあり、全国各地の同じ鰻屋同士で意見を交換するのも簡単で、アイデアを生み出すためのひとつのツールとして活用する鰻屋は多い。

「ソーシャルでの鰻屋の交流はとても良いと思います。弱小の鰻職人達がまとまりを作り、きちんとした職人のいる店が注目を浴び、安定した仕事が出来ることをいつも夢見ます」

前出のように鰻職人を今後、増やしていくためにはどうしたらよいだろうか?

「ノルウェーのサケやサバ漁のように、研究者、国、漁師が意見を合わせ、しっかりとしたウナギ資源管理の元、弱小零細の鰻屋が安定する事が、今後の職人の希望者の数に関係していくと思っています」

[データ]
「うなぎ甘露煮せしも」
〒329-0316
栃木県栃木市藤岡町石川315-2
TEL:0282-67-2551

代表取締役 瀬下知也 のコピー.png

















*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中
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