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美味!!「鯉」メニューのお店34〈2017年6月5日号掲載〉 [鯉シリーズ]

埼玉県行田市 割烹「魚豊」

地域と密着、お客様を大事に

秩父鉄道・行田駅を下り、徒歩7〜8分で目的地の川魚料理店「魚豊」に到着した。
「魚豊」は1862(文久2)年、江戸時代末期の創業という老舗で、今年で155周年。行田市内では最も古い店だという。話を伺ったのは店を切り盛りする31歳、七代目の橋本兼一さん。

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「魚豊」の外観(上)と、店内の様子

「行田市は大きな河川が流れており、昔は天然のウナギがたくさん捕れました。城下町だったので商人がウナギなどを売るようになり、川魚料理が発展していきました。現在でもうなぎ屋が多いのはそのためです」。
ウナギは国内外産問わず、その時期に一番いいものを仕入れ、サイズはすべて4Pを使用。うな重は「上」(税別2,700円)「中」(1,880円)「並」(1,500円)「姫」(1,000円)の4種類あるが、いずれも手頃な価格といっていいだろう。

「ウナギというと、庶民の方が『ちょっとぜいたくしよう』『たまには奮発して食べよう』という感覚だと思うんです。そう考えると私の中では高くても3,000円が限界かなと。一時期、価格が非常に高騰した際には止むなく値上げをさせていただきましたが、それ以降は改定していません」。

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「うな重 上」

仕入れ価格も一時、非常に高かったときがあったが、「ウナギは高くて食べられない」という来店客がいたときのために、もちもちした食感とふっくらしたうなぎのハーモニーが自慢の「うなちまき」(380円)や、人気の鶏とウナギを盛り合わせた「うな鶏重」(1,260円)など、比較的注文しやすいメニューも考えた。

「幸い、お客様は常連さんが多いので、値上げしてもご来店くださいました。やはり歴史があるので信頼をいただいているのだと思います」。
食事だけの来店客は以前よりもやや減り、最近は横ばいが続いているが、出前の注文が減るなど一時期と比べて需要は落ちている。ただ、値上げした分、売上自体は増えているという。

一方、コイは主に長野県産を使用。一尾の重さは0.9〜1.3kgほど。「鯉あらい」(600円)と「鯉フライ」を提供し、「うな重」の吸い物として「鯉こく」を出すこともある。

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コイは1尾、0.9〜1.3kgほど

「コイが苦手なお客様には『先ほどまで泳いでいたのでぜひお試しください』とお勧めしますが、『初めて食べたけどおいしい』という反応が多いですね。コース料理ではあらいか刺身かを選べますが、多くのお客様があらいを注文されます」。

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「鯉のあらい」(上)と「鯉のフライ」

ここ数年は宴会需要が増えているため、橋本さんは「コイの需要自体は増えているのでは」と話す。「魚豊」でも看板メニューとして、うな重を待っている間に鯉あらいを食べるスタイルが定着している。

「50〜60代の中高年の常連さんが多く、若いお客様は2〜3割程度ですが、客層はある程度絞る必要もあります。重要なのはいかに今の客層を大事にしていくかです。当店は家族経営ですが、『うなぎ職人ってカッコイイな』と思われる雰囲気を作り、そういう魅力を発信すれば若い職人も入ってくるのではないでしょうか」。

橋本さんは業界の人材不足問題についてそう指摘したほか、「今後も引き続き、この地で地元密着の店として続けていきたいですね。長く歴史を重ねるためにはお客様の声に耳を傾けることも欠かしてはいけません」と語った。

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7代目の橋本 兼一さん

「魚豊」
〒361-0073 埼玉県行田市行田20-17
TEL:048-553-3113


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美味!!「鯉」メニューのお店33〈2017年5月25日号掲載〉 [鯉シリーズ]


さいたま市南区 うなぎ・川魚料理「幸楽園」

「鯉こく」を楽しみに来店されるお客様少なくない

埼玉県内では昔から川魚文化が発達し、さいたま市内にもその名残で今も多くのうなぎ屋が点在している。南区の閑静な住宅街に店を構える「幸楽園」もそのひとつ。
「幸楽園」は昭和5年創業。高台に面していて眺めがよく、眼下に広がる上谷沼調節池はかつて広大な沼地帯で川魚が生息していたため、利用客に鰻や鯉などを提供するようになった。

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「幸楽園」の外観。創業は昭和5年

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大人数も利用できるテーブル席

鯉料理は「鯉の洗」と「鯉こく」を提供。取材に応じてくれた大高立之専務取締役は「5時間煮込むことで骨まで食べられるようにしています。『鯉こく』を楽しみにご来店されるお客様も多いので、きちんとしたものを出したいですね」と料理のこだわりについて話すほか、「年配のお客様も多いですが、若いお客様も注文されます。埼玉県では川魚文化が根付いているため、お客様も鯉に食べ慣れているのでしょう。鰻屋が多いこともあり、『うなぎを食べるならこの店』と自分のお店を決めているお客様が多いです」と、消費も特に落ち込んではいない。

コース料理にも必ず鯉料理が入るが、初めて食べた利用客でも「こんなに美味しいんだ」と好感触を示すという。

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「鯉のあらい」(上)と「鯉こく」

また、うな重は「大鰻重」「二段重」「特上」「松重」の4品を提供。売れ筋商品は「特上」だが、1尾をそのまま使用した「大鰻重」も人気が高い。
「やはり鰻を食べる頻度は決して多くないため、『せっかく食べるんだから』と『大鰻重』をご注文されるお客様も多いです。数年前にTV番組で紹介された際には大変な反響でした」。

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「うな重」特上

一方で、大高専務は「私以外にもう一人職人がいますが、若い人材が少ないのが現状です」と、喫緊の課題である職人不足の問題にも言及。その原因について「職人を目指す学生たちにとって、うなぎ業界が魅力ある職場に写っていないのだと思います。彼らにとって〝うなぎ業界〟がどういうものか、想像できないのではないでしょうか。調理講習会などの場がもっと広がってほしいですね」と話す。うなぎ業界を少しでも働きやすい場所にしていくことが必要だろう。

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「鯉こく」は5時間じっくりと煮込む

大高専務自身、35歳でこの業界に転職した経験を持ち、「お客様を逃さなかったからこそ今まで続けることができました。基本に忠実な料理をお出し続けてきたことが大きいと思います」と振り返る。

「お客様は満足してくれたからこそ、改めて足を運んでくださいます。お客様は特に変化は求めていません。当店に『鰻重』や『鯉の洗』『鯉こく』を食べにご来店くださるのですから、大切なのは引き続き基本に忠実なメニューをご提供し続けることではないでしょうか。いかに多くのお客様にリピーターになっていただくか、それを考えるのも私たちの仕事だと思います」。

利用客に満足してもらうには、基本に忠実という姿勢を崩してはならない。

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大高 立之専務取締役

「幸楽園」
〒336-0015 さいたま市南区太田窪2235
TEL:048-882-2909


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美味!!「鯉」メニューのお店32〈2017年5月10日号掲載〉 [鯉シリーズ]


埼玉県行田市 川魚料理「堀口屋」

若い世代の需要拡大に期待

連載している「鯉シリーズ」の取材で今月1日、埼玉県行田市の川魚料理店「堀口屋」を訪ねた。
「堀口屋」は秩父鉄道の「行田市駅」から徒歩1分。駅前は静かだが、駅前から続く幹線道路は平日の日中でも車通りが多い。幹線道路を少し歩くとほどなく、「うなぎ」と書かれたのぼりとのれんが掲げられた三階建ての「堀口屋」が見えてきた。

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「堀口屋」の外観。現在の店舗は昭和48年に建て替えられた。

「堀口屋」は大正6(1917)年創業。今年でちょうど100年の節目を迎える老舗川魚料理店で、現在の堀口弘代表は三代目。以前は「鯉の洗い」「鯉こく」「鯉のうま煮」の3品を提供していたが、昔と比べて客層が変わり、需要が少なくなってきたため、現在も提供しているのは「鯉の洗い」の1品のみとなってしまった。

「鯉は主に長野県産か群馬県産のものを使用しています。1尾の重さは800g〜1.2kgくらいが多いですが、このくらいのものが一番美味しいといわれています。全体的に丸みを帯びていて身がやや白味がかっているものが特にいい鯉です」。

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「鯉の洗い」

堀口代表は使用する鯉のこだわりについてそう話す。「鯉の洗い」は独特の歯応えはもちろんだが、川魚特有の強い臭いがまったくないのも特長。鯉を飼育する生けすは井戸水を使用、活かし込んでいるので臭いが消え、身もキュッと締まるという。

「鯉の需要自体は減っていますが、以前と比べて『鯉の洗い』を注文する若いお客様が増えました。若いお客様にはもっとご来店いただきたいですね」。
堀口代表は低迷が続いている鯉の需要の回復に期待を寄せた。

一方、鰻は主に鹿児島産を使用。メインメニューはうな重「上」「並」「小」で、特に「上」が売れ筋商品となっている。
「鰻特有の旨みや香りを引き出すために余分な脂を取り除き、蒸しを効かせた白焼きを秘伝のタレに潜らせます。うなぎはやはり裂いてからすぐ焼いてお出しするのが原則です。特に昼間はお客様が集中しますし、お待たせするとお客様の足が遠のいてしまいますから」。

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メインメニューの「うな重」は売れ筋商品となっている。

堀口代表は鰻のこだわりについてそう話す。鰻の需要については、一時期高騰したときは確かに厳しかったものの、客足自体は特に減ってはいないという。7〜8月の繁忙期はもちろん、毎月コンスタントに利用客が来店し、遠方から訪れる利用客も多い。行田市内から来店する客層は主に40〜70代が中心だが、最近は20〜30代のグループや二人連れの利用客も増えてきた。

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「若いお客様にも召し上がっていただこうと、鰻を使ったちらし寿司『うなちらし』を始めました。酢飯であっさり仕上げているのが特長で、特に女性のお客様にお勧めです。鰻があまり得意でないお客様が試しに食べてみようと注文されることも多いですね」。
堀口代表自身も、若い来店客が増え、鰻や鯉を注文して美味しそうに味わってくれることをとても嬉しく感じ、「若鮎の天ぷら」を勧めることもある。

「2階は8名〜最大で50名までご利用いただける大広間になっています。以前と比べて接待でのご利用は減りましたが、法事や宴会でのご利用は多いです。引き続き一生懸命やっていきます」。
若い世代の来店がさらに増え、需要を押し上げることを期待したい。

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堀口 弘代表

川魚料理「堀口屋」
〒361-0072 埼玉県行田市宮本2-6
電話:048-556-2227


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美味!!「鯉」メニューのお店31〈2017年4月25日号掲載〉 [鯉シリーズ]


さいたま市浦和区「うなぎ 満寿家(ますや)」

「あらい」の魅力は独特の食感と酢みそ

今号の「鯉シリーズ」はさいたま市浦和区にある「うなぎ 満寿家」を訪問。五代目の矢部貢美子代表取締役に伺った料理のこだわりや、お店として行なっている面白い取り組みなどについて紹介したい。

「満寿家」は明治21(1888)年創業、およそ130年続いている老舗蒲焼店。JR浦和駅から徒歩6分ほど歩いて中山道に出ると、ほどなく木造の落ち着いた風格の建物が出迎えてくれる。3年前に店舗をリニューアルし、テーブル席のほかに8種類の個室も併設。2人から最大65人まで、会食・商談・祝い事・法事と人数や目的に応じて利用できる。

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「満寿家」の外観と店内の様子

鯉の産地は茨城県で、鯉メニューは「鯉あらい」と「鯉こく」の2品を提供。
「『あらい』の魅力はやはり独特の食感と酢みそなので、昔から酢みその味は変えていません。『鯉こく』は身の味をしっかり出すため、あまり煮込みすぎないようにしています」。

矢部社長は料理のこだわりをそう説明する。酢みそなのでスッと食べられてお腹にもたまらず、さっぱりした『あらい』とややこってりした『鯉こく』のバランスが逆によいという。矢部社長は「特に『鯉こく』は滋養強壮にも効果的で、『お嫁さんに食べさせたい』とお持ち帰りになるお客様もいらっしゃいます」と、利用客から好評であることを強調。また、昼食コースと懐石コースのほとんどの料理にも「鯉のあらい」がつくほか、「うな重」と「鯉こく」が味わえる「満寿家セット」も提供。

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「鯉のあらい」と「鯉こく」

「鯉はお客様によって好みが分かれますが、好きなお客様はやはり『あらい』を注文されます。『満寿家セット』も初めてご来店されたお客様はわりと注文されますので、『鯉こく』にも特に抵抗感はないようです。KHVが発生した際には確かに落ち込みましたが、それ以降は決して減ってはいません」。
鯉の需要自体は大きくは変わっていないという。

一方、うなぎメニューは「うな重」並・上・特上「ひつまぶし」が中心で、特に「上」と「ひつまぶし」が売れ筋商品。主に九州産を使用し、メニューによって3P・5P・6Pを使い分けている。

「すべて紀州備長炭と秘伝のタレで焼き上げ、やや甘口に仕上げているのが特長です」。
客層は比較的年配が多いが、昔から浦和では川魚文化が根強いため、周囲にはうなぎ屋が点在。矢部社長も「土地柄、あまりうなぎ離れは感じていません。店舗をリニューアルしてからは客足が増えています」と、うなぎの消費は増えていることを感じている。

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「うな重」(特上)

「浦和のうなぎ」で街を盛り上げていることに関連し、定期的に地元の小学校の三年生を対象に、矢部社長が浦和のうなぎの歴史や、関東と関西での味やさばき方の違いなどについて講義する教室を開いている。矢部社長も「やはりそれほど地元にうなぎが浸透しているのだと思います。学校の授業でもうなぎを取り上げてくれているのはありがたいですね。児童は皆、真剣に聞いて多くの質問をしますし、私も児童にどう説明しようかと考えます」と、刺激を受けている。同じように15年ほど前からは小学二年生の児童を対象に、うなぎを調理する様子を見学したり、活鰻に触れてもらったりする教室も実施。「それがうなぎを好きになるきっかけになれば」と矢部社長も期待を寄せている。

最近は家族連れで来店する客が多く、三世代でうなぎを注文する客も増加傾向。お宮参りで、七五三で、さらに結納で来店と続けて利用する客もいる。

「子供の頃に食べた味は忘れることはありません。そのようにして次の世代へうなぎの味が引き継がれていくのは本当に嬉しいです」。

うなぎのおいしさや魅力を知った子供たちが将来所帯を持ち、「『満寿家』は昔見学に来たからよく覚えている」という気持ちで久しぶりに来店、うなぎの味に再び舌鼓を打つ。子供たちの間にさらにうなぎが浸透し、消費の拡大につながってほしい。

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矢部 貢美子社長

「うなぎ 満寿家」
〒330-0064 さいたま市浦和区岸町7-1-3
電話:048-822-1101


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美味!!「鯉」メニューのお店30〈2017年4月15日号掲載〉 [鯉シリーズ]


埼玉県久喜市 川魚料理「田口屋」

若い層へいかに美味しさ伝えるか

今号の「鯉シリーズ」は、埼玉県久喜市にある川魚料理店「田口屋」を訪問。三代目の田口敏男店長に料理のこだわりや利用客の感触、今後の展望などについて話を伺った。
「田口屋」はJR高崎線の「桶川駅」から車でおよそ15分。交通量の多い幹線道路から狭い道を曲がると間もなく、「うなぎ・なまず・こい」と書かれたのぼりや暖簾を掲げた重々しい外観が見えてくる。

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「田口屋」の外観

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ゆったりとくつろげる店内

「かつては酒屋で酒とウナギを併売し、天丼や玉丼なども扱っていたときがありましたが、二代目(田口店長の父)が『川魚に特価した方がいい』と判断。以来、ウナギやコイをメインに扱っています」。
田口店長はお店についてそう紹介してくれた。

使用する鯉の産地は日によって異なるが、主に群馬・福島県産が中心で、1尾の重さは1.2〜1.5kgほど。鯉料理は「鯉あらい」「鯉刺身『たたき』」「鯉こく」「鯉うま煮」の4品を提供し、中でも「あらい」の注文が多い。

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「鯉のあらい」

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「鯉刺身たたき」

「『あらい』の場合は特に使用するコイによって切身の厚さが変わってくるほか、コリっとした独特の歯応えを出すためにお湯の温度管理にも気を使います」。
田口店長は調理する上でのこだわりについてそう話す。また、「うま煮」は味付けに地元産の醤油を使用。色が濃くしょっぱ味が少ないためコイに合っているのが特長で、短時間で一気に煮上げている。

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使用する鯉によって切身の厚さを変えるのがこだわり

「コイは本当においしい魚ですが、実際に食べてみないとその魅力は伝わりません。栄養も豊富ですし、やはりなじみの薄い若い世代に親しんでもらえれば消費も増えると思います。最近は若いお客様も増えているので、骨の問題をどのように克服するか考えながら、若い世代に召し上がっていただけるようにしたいですね」。
田口店長はそう話し、若い客層へのアプローチを重視している。

一方、うなぎについては鹿児島産や三河産を主に使用。「うな重」は並・上・特上とあり、上が売れ筋商品となっている。
「タレは代々受け継がれているものを使用しています。当然のことですが、大切なのは一生懸命気持ちを込めて焼くことですね。また、当店は金串を使用していますので、串が抜けてしまわないよう極端に柔らかくしないように気を使っていますが、お客様からは『おいしい』と好評いただいています」。

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「うな重 上」

隣接する加須市では元々うどんの消費量が多いことからメニューにはうどんやそばも取り入れている。うなぎで足りない利用客がさらにうどんを注文するケースも多い。

「当店ではうなぎの消費自体は以前と比べても特に変わっていません。ただ、コイと同様にもっと若い世代に召し上がっていただきたいと思っていますので、若いお客様が来店されたときは特に嬉しいですね。『数年後に子どもを連れてまた来店してくれないかな』と、期待を寄せることもあります」。

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「鯉のうま煮」

田口店長が「最近は若いお客様が増え、先日までは春休みでお子さん連れのお客様も多くいらっしゃいます」と話すように、取材中にも子ども連れの利用客が数組見受けられた。
客席にはうなぎに含まれる栄養価など、うなぎに関する豆知識を記したカードを置き、待ち時間に見てもらうことで少しでも若い利用客にうなぎに親しんでもらおうという工夫も施している。

「あやめとラベンダーが咲き誇る久喜市菖蒲地区では6月4日〜25日まで、毎年恒例の『あやめ・ラベンダーのブルーフェスティバル』が開催されます。圏央道も開通してアクセスがさらに便利になりましたので今年も混雑が予想されます」。

繁忙期の大型連休も目前だが、この機会にさらに若い客層を取り込みたい。

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田口 敏男店長

川魚料理「田口屋」
埼玉県久喜市菖蒲町下栢間2106
電話:0480-85-0496

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美味!!「鯉」メニューのお店29〈2017年4月5日号掲載〉 [鯉シリーズ]


さいたま市南区「萬店」

消費拡大は生産者が奮起できる仕掛けを

今号の「鯉シリーズ」はさいたま市南区の川魚料理店「萬店」を取り上げ、四代目の金子剛専務に、鰻・鯉料理のこだわりや今後の展望などについてお話を伺った。

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「萬店」の外観

「萬店」はJR埼京線「中浦和」駅から徒歩3分、1886年(明治19年)創業の老舗。農業の傍ら開いたお店で、この地の特産である鰻やナマズ、鯉などの料理を街道を往来する旅客に食事として提供したことに始まる。当時は東に別所沼、西に鴻沼があり、さらに荒川の流れも近く水郷地帯だった。浦和市では当時から大きなうなぎ屋があったことから次第にうなぎの町として発展し、野趣豊かな「萬店」の川魚料理も釣魚客などの間に知られるようになった。

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広々とした店内

鯉料理は「鯉の洗い」「鯉こく」「鯉のうま煮」の3品を提供。産地は主に茨城県で、1尾の重さは1.2kgほど。「洗い」は以前は肉厚のものを提供していたが、今は薄作りにして提供。金子専務は「薄くしたことによって骨に対する抵抗がなくなり、召し上がるお客様が増えてきました。『洗い』は大量に食べるのではなく、刺身として楽しむものですから」と、より食べやすくなったことを強調する。

また、「うま煮」は少し甘めの味が特長。「鯉こく」も昔から同じみそを使い、長時間煮ることによって独特のコクや味を出している。ただ、金子専務は「『洗い』も酢みその具合で味が違ってきますし、やはり川魚はどのようにその特長を出すかが難しいですね。鯉は健康にもいいのでもっとPRしたいんですが」と、利用客に喜ばれる味を出すことの難しさも強調。「供給自体がタイトになっているので、何か生産者が奮起するようなきっかけがないと今後の需要は厳しいのではないでしょうか」と、消費の低迷に警鐘を鳴らす。

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「鯉のあらい」(上)と「鯉こく」(下)

一方、うなぎは鹿児島県産と徳島県産を使用。料理は「梅重」「竹重」「松重」をメインに7品を提供し、日によってまちまちだが、どの料理も平均して売れ筋商品となっている。金子専務が「10人に一人はうなぎが食べられないというお客様もいらっしゃいますので、それ以外のメニューも揃えています」と話すように、「上天ぷら御膳」や「点心御膳(和食 雪)」などうなぎ以外のメニューも豊富。

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「うな重」

「お客様からのご要望にお応えし、蒲焼と白焼を一緒に味わえる『うなぎ三昧』もご用意しました。一度に2種類の味が楽しめるとあって人気を集めています」。

一方で、ウナギの消費については「浦和に限れば前年対比は少しずつ増えていると思います。〝うなぎの町〟として、美味しいうなぎ屋がたくさんある町として市民や店などが一体となって外部に発信し、PRしていることが大きいでしょう。ただ、ウナギを食べる消費者の層は増えていますが、ウナギを食べない消費者の層も増えていますので、全体的な市場としては依然として苦労が続いています。やはりまだ高価な食べ物であることには変わりありませんし」と、依然として厳しいという見方を示している。蒲焼と白焼が同時に楽しめる「うなぎ三昧」を開発したのも、うなぎを食べてくれる利用客に喜んでもらいたいという気持ちがあったからこそ。

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「お客様から支持をいただいているのはやはり『うな重』です。最近は、特に土日祝日は家族連れで来店されるお客様が増えてきました。祖父母や両親が食べたくて孫や子どもを連れてこられたり、孫や子どもにも食べさせたくて来店されたりと、お客様のご要望もさまざまですが、若い世代に食べてもらえなければウナギ業界は先細りになってしまいます。子や孫の世代に食べてもらうために何をすべきか考えるべきではないでしょうか」。

鯉も鰻も、生産者が奮起し、特に若い世代が魅力を感じるようなPRが必要だろう。

6面、金子剛専務<萬店> のコピー.JPG




















金子剛専務

川魚料理「萬店」
〒336-0031 さいたま市南区鹿手袋1-2-26
電話:048-862-5648


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美味!!「鯉」メニューのお店28〈2017年3月25日号掲載〉 [鯉シリーズ]


若年層からの需要も増えるウナギ・コイ

埼玉県川口市 鰻・割烹料理「竹江」

今号の「鯉シリーズ」は埼玉県川口市の、鰻や鯉をメインに扱う「竹江」を訪問、磯明生代表取締役に、料理のこだわりやサービス面での工夫などについてお話を伺った。

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「竹江」の外観

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大広間の様子

「竹江」は今年で創業から39年、来年で40年の節目を迎える。父の後を継ぎ、磯代表は二代目。
鯉料理は基本的に「鯉のあらい」一品だが、事前に予約をすれば「鯉こく」の注文も可能。単品のほか、4,500円〜7,000円まで500円ごとに設定された6種類のコース料理にもすべて含まれている。以前は「鯉のあらい」のみだったが、十数年前に鯉ヘルペス(KHV)が発生した際、利用客から「『鯉のあらい』を『刺身』に変えてもらえないか」という要望が寄せられたため、現在は「刺身」など4品目から選択できる。それでも「鯉のあらい」を注文する客が圧倒的に多い。

「その当時も鯉が好きなお客様はあまり気にされない様子でしたが、それでも4〜5年は需要が減りました。それ以降は何とか戻ってくれましたが」。

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「鯉のあらい」

産地は群馬県が多く、1尾の重さは1.2kgほど。大きすぎると骨が当たり、小さすぎても貧相に見えてしまうため、ほぼ中くらいの大きさを使用。独特のプリッとした食感が特長で、磯代表も「身が反っている形はまるで生きているようです。作りたてのあらいは特に甘味がありますから」と強調。

以前は注文する利用客は年配者が多かったが、ここ四〜五年で若い客にも広がっているという。「鯉は川魚料理屋でしか出すことができません。若いお客様にもご注文いただけるのは嬉しいことです」と、磯代表も笑みを浮かべる。

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鯉の尻尾を使った「鯉の唐揚げ」。夏場からメニューへの導入を検討している

一方、うなぎは鰻重が「梅(並)」「竹(上)」「松(特上)」「桜(大串)」「桐(二段重)」の5品目、蒲焼は「竹」「松」「桜」の3品目を提供。産地は宮崎・鹿児島県が大半を占め、利用客にもわかるよう、店の玄関前にその日使用している鰻の産地を表示している。使用サイズは「桜」が3.5P、「竹」が5P、「梅」とコース料理は6P、「松」が1尾と4分の1など細かく使い分けている。鯉と同様にここ数年は若い利用客からの注文も増えているが、その理由について磯代表は「確かに高いですが、当店では決して金銭に余裕があるお客様しか注文できない値段ではないからだと思います。うな重は一杯で満腹になることも大きいのではないでしょうか」と話す。

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「うな重」

「お客様からも『美味しい』という声をいただいています。常連のお客様が多いですが、最近は家族連れや若いカップルなど客層も広がってきました」。
今のところ、店のホームページなどは用意していないが、ブログやフェイスブック・ツイッターなどSNSで情報を収集して来店する若い客が多いようだ。

「末長くお客様にご来店いただくのはありがたいですから、若いお客様が増えたことは大歓迎です。以前と比べて仕入れ価格は倍になっているので、売価も3回に分けて少しずつ上げさせていただきましたが、もちろん倍に引き上げることはできません。より多くのお客様にご来店いただくにはなるべく安くご提供しないといけません」。

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そうした影響もあって、年間で扱うウナギの量は5tにも及ぶ。若い利用客が増えているため、夏場は客が集中して毎日が日曜日のような忙しさを迎え、売上が倍に。特に川口市内は寺院が多く、土日祝日は法事などで常に賑わいを見せる。

また、店の西側を流れる、荒川につながる見沼代用水では昔は天然のウナギが豊富にとれたことから、店の一角に「魚供養之碑」を設置。毎月1日にウナギやコイの供養も行っている。

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敷地内に建つ川魚供養碑

利用客により快適に過ごしてもらおうと、現在店舗を改装中。新館には新しいじゅうたんを敷き詰めた。

「お客様にご来店いただくには雰囲気・接客・設備など、やはりサービスが必要です。ただ、うなぎは古くからの食文化ですから、床の間や入口の植木など、昔ながらの雰囲気は残しながら改装を進めています」。

和の風情はそのままに、新しく生まれ変わる店舗で利用客を出迎える。

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磯 明生代表取締役

鰻・割烹料理「竹江」
〒334-0001 埼玉県川口市桜町1-5-3
TEL:048-283-8812


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美味!!「鯉」メニューのお店27〈2017年3月15日号掲載〉 [鯉シリーズ]


まずは地産地消で鯉食の拡大を!

福島県郡山市「四季彩 一力」

今号の『美味!!「鯉」メニューのお店』では、先月22日に福島県郡山市を訪問した際に取材した同市のホテル「四季彩 一力」を紹介。齋藤清男調理長に「鯉に恋する郡山プロジェクト」の手応えや、鯉の消費の拡大方法などについて話を伺った。

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「四季彩 一力」の外観

「四季彩 一力」は1918(大正7)年の創業、来年100年の節目を迎える。一昨年2月、イギリスのウィリアム王子が東日本大震災の被災地を訪問した際に政府主催の晩餐会が「四季彩 一力」で開かれ、安倍総理大臣とウィリアム王子が宿泊。後日、英国大使館から感謝の手紙が届いたことがある。

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食事はゆったりとした食堂で

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12畳の広々した和室も魅力

「四季彩 一力」は「鯉のあらい」「鯉の旨煮」「鯉コク」を中心に、伝統を引き継いで昔ながらに鯉料理を提供する宿泊施設として有名で、郡山市が先月11日〜今月11日まで実施していた「鯉食キャンペーン」の期間中も、追加料理として希望する客に鯉料理を提供していた。

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「鯉のあらい酢味噌」

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「鯉コク」

「東日本大震災以降、鯉養殖は落ち込んでいますが、それでも生産量は全国の市町村で一位です。食べればおいしいので、地産地消で地元の方にはもちろん、他県からのお客様にも郡山の鯉をぜひ召し上がっていただきたいと思っていました」。

そう話すのは齋藤調理長。一般家庭では食べる機会が少ないため、「こんなにおいしいのか」と驚く客も多いという。

「旨煮は17〜18時間ほど煮込みます。時間をかけることでウロコも柔らかくなり、味も染み込みますので」。

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「鯉の旨煮」

鯉の生産量が日本一である一方、消費が追いついていない郡山市だが、今回の「鯉食キャンペーン」をきっかけに関心が高まっている。昨年11月には「鯉に恋する郡山プロジェクト」の一環として「捌き方講習会」を開催、市内のイタリアンやフレンチなどの料理人が参加した。今まで鯉に触れる機会がなかったうえ、鯉は捌き方も独特で難しいが、参加者からの反応はよく、齋藤調理長も「市から依頼があればいつでも開催したい」と意気込む。

「鯉本来の味やおいしさが失われてはいけないと思いますので、『あらい』『鯉こく』『旨煮』といった食べ方は崩したくありません。メニューで鯉料理を3〜4品に増やしてみようかと思っています。お客様に召し上がっていただいて『おいしい』となれば商品として確立させることができます。地元の名産なら自信を持って出せますし、生産者の顔がはっきりしていればお客様も安心できますから」。

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鯉料理に特化したメニューも計画中。「鯉食キャンペーン」も消費拡大のきっかけにしたい

齋藤調理長は「食べてもらうのが一番手っ取り早い」とも強調する。
「今までは鯉を扱う飲食店が少なく、食べる機会がありませんでした。もっと多くのお店で鯉料理を導入してもらうために始めた『鯉食キャンペーン』ですが、元々鯉を好きなお客様は多いですし、地元の食材で安心できるとあって皆さんも関心があるのでしょう」。

「捌き方講習会」や「鯉食キャンペーン」を機に鯉料理を始めた飲食店もある。
「私たちも日々『地元のものはおいしい』という思いで努力しています。郡山で生産された鯉を多くの皆さんに召し上がっていただくことで他の料理でも使えるのではないでしょうか。これをきっかけに鯉食がもっと広まっていくことを願っています」。

齋藤調理長はそう期待を寄せた。

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齋藤 清男調理長

「四季彩 一力」
〒963-1309 福島県郡山市熱海町熱海4-161
電話:024-984-2115


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美味!!「鯉」メニューのお店26〈2017年2月25日号掲載〉 [鯉シリーズ]


SNS等で若い世代にアプローチ

埼玉県ふじみ野市「一味亭」

今号の「鯉シリーズ」の舞台は埼玉県ふじみ野市にある「一味亭」。本紙1月10日号の「新・百鰻見聞録」で紹介しているが、鯉料理が食べられるお店として再度取り上げてみた。

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「一味亭」の外観

「一味亭」は創業50年。鯉料理は「あらい」「うま煮」「鯉こく」の3品を提供している。創業以来、茨城県の霞ヶ浦産の養殖鯉を使用し、1尾の重さは1.5kgほど。
「『あらい』は調理後に置いておくと独特のプリプリ感が出ず、色もくすんでくるので、ご注文を受けてからさばいています」。
そう説明するのは三代目の西山加三喜専務。また、「うま煮」と「鯉こく」は高齢者や子供でも食べやすいように、圧力鍋で時間をかけて骨まで柔らかくしてある。「うま煮」は砂糖・醤油・みりんを使って味を少しずつ染み込ませていくほか、「鯉こく」は合わせみそとの兼ね合いがよく、弱火で鯉の味をより出しているのが自慢。

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「鯉のあらい」

「鯉は泥臭いこともありませんし、鯉が好きな子どもさんもいます。実際に召し上がったお客様からも『おいしかった』という反応が多いですね。ただ、ご注文いただくのは年配のお客様が大半で、若いお客様はほぼ『初めて食べた』という反応です」。

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「鯉のうま煮」

西山専務はそう話し、若い世代は食用鯉としてのなじみがなく、食わず嫌いの傾向があることを強調した。そのため、若い来店客が注文する際には「あらい」は「刺身」、「うま煮」は「煮魚」、「鯉こく」は「みそ汁」と説明することで理解してもらっている。妻で若女将の千晴さんも「特に『あらい』はご注文いただいてから調理するので新鮮であることもお伝えします。お客様への伝え方も大事ですね」とも話す。また、コース料理では「白扇揚げ」も提供。せんべいのような食感で食べやすく、塩味を効かせているので酒のつまみとしてもお勧め。

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「鯉こく」

一方、うなぎは鹿児島産を使うことが多く、サイズは5P。売れ筋商品はボリューム感たっぷりの「うな重3枚のせ」。時間をかけて蒸すことでふわっとした食感を出している。
「たれはさっぱりしていて香ばしいのが特長です。お客様からも『柔らかくておいしい』とご好評をいただいています」。

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「うな重2枚盛り」

最近はお宮参りや七五三の記念に来店する客も多く、うなぎの消費は増えている一方、鯉の消費は横ばい。西山専務は「お客様に召し上がっていただけるようにするには、『シャキッとした舌触りでおいしいです』といった情報を伝えたり、ホームページやフェイスブックなどで鯉について知っていただいたりすることも大切です」と、若い世代へのアプローチを重視。

「うなぎは待ち時間が長いので、お客様に『今蒸しています』『本焼きに入りました』とお声かけしています。外の池や庭をご覧になりながら、ゆったりと落ち着いた雰囲気の中でお楽しみいただければ」。
千晴さんもそう強調し、「うなぎは『鰻上り』、鯉も『鯉のぼり』のように、縁起のよいものとして販売していきたいですね」と意気込みを語ってくれた。

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三代目の西山加三喜専務(左)と妻の千晴さん

「一味亭」
〒埼玉県ふじみ野市ふじみ野3-4-10
電話:049-262-5321


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美味!!「鯉」メニューのお店25〈2017年2月15日号掲載〉 [鯉シリーズ]


コイ独特の歯応えとしっかりした食感を堪能できる

埼玉県行田市 割烹「満る岡」

今号の「鯉シリーズ」は、埼玉県行田市にある割烹「満る岡」を訪問。六代目の市原祥営業マネージャーに料理のこだわりや、サービス面での工夫などについてお話を伺った。

「満る岡」は1875年創業、140年以上の歴史を誇る老舗で、明治から昭和初期にかけて活躍した作家・田山花袋の小説『田舎教師』にも登場する。元々は酒屋だったが、店が熊谷市に向かう国道125号線に面しているため古くから人の往来が多く、飛脚や旅人などが一服する休憩所として繁盛。酒とともに料理で客をもてなすようになった。海に面していない埼玉県だが、当地は川に挟まれているため川魚料理の文化が発達。当時は遠隔地から魚を運ぶのが困難だったため、地元で消費する動きが広まっていったという。

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田山花袋の小説『田舎教師』にも登場する「満る岡」

鯉料理は「鯉のあらい」と「鯉こく」を提供。鯉の産地は群馬・福島・滋賀などがあるが、そのときに一番いいものを使用している。1尾の重さは1.2〜1.3kgほどで、「あらい」なら6〜7人前調理が可能。

「一般的な海水魚とは違い、コイ独特の歯応え、しっかりした食感が堪能できます」。
市原マネージャーはおいしさについてそう話す。酢みそにわさびを混ぜて食べるのも特長で、ちょうどいい辛さが味わえる。

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「鯉のあらい」

また、「鯉こく」は弱火で煮詰め、時間をかけることでコイ独特のコクを出す。普通のみそ汁よりしっかりした深い味が自慢で、最もおいしいといわれる肝臓も味わうことができる。

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「鯉こく」

一方、うなぎは「うな重」「うな重『特上』」「うな重『特大』」「櫃まぶし」などメニューはさまざまだが、売れ筋はやはり「うな重」と「特上」。コース料理にも「うな重」がつくが、どうしてもうなぎが苦手という利用客向けに、うなぎを使用していない「とり照焼重」「牛フィレ肉直火焼重」といったユニークなメニューもある。産地は鹿児島・宮崎・静岡などだが、おおむね九州が多い。使用サイズは3P〜5Pが中心。

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「うな重 特上」

「タレは甘すぎず、ドロっともしておらず、キレがあります。さっぱりした、あまりしつこくない味が特長です」。
市原マネージャーはうなぎ本来の味を生かしていることを強調する。食べやすい味であることから、利用客からも「おいしかった」という声が多く寄せられている。

うなぎ関連メニュー全体の消費について、市原マネージャーは「ここ十数年で、売上としては徐々にですが上がっています」と話す一方、「どうしてもご注文いただくお客様の年齢層は高くなっているので、祖父母から孫へと、世代間でしっかり定着するものにしていきたいですね」とも話す。コイの消費についても「『あらい』は比較的幅広い年齢層のお客様が注文されますが、『鯉こく』は高齢のお客様が多いです。お客様のニーズに沿ったものを提供することで消費を伸ばしていければ」と強調。

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店内の様子

平成10年には店舗を全面改装。以前は個室が多かったが、ホール30席に加え、最大100人まで利用できる大小の個室や宴会場なども設けた。
「七五三やお宮参り、法事や宴会など、お客様の目的に合わせてご利用いただけます。お気軽に立ち寄れる雰囲気ですので、お食事のみのお客様もお待ちしています」。

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お年寄りから子供まで入りやすいお店としてリニューアル。対応の仕方もケースバイケースだ。
「子供が将来、大人になっても『うなぎを食べよう』となるように、業界にとって特に子供の消費は必要でしょう。お客様にうなぎやコイの味を理解していただけるように食文化を伝えていくのがうなぎ屋の使命ではないでしょうか。子供から『おいしかった』といわれると特に嬉しいですし、それが店にとっても業界にとってもプラスになると思います」。

市原マネージャーは「ご家族で味わっていただき、親から子へ、子から孫へと、お客様にも世代間で伝統の味を伝えていっていただきたいですね」とも強調した。

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市原 祥営業マネージャー

割烹「満る岡」
〒361-0057 埼玉県行田市城西4-6-2
TEL:048-554-2263


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美味!!「鯉」メニューのお店24〈2017年2月5日号掲載〉 [鯉シリーズ]


何をすればお客様が喜んでくれるか

「鰻のまんまる」池袋店

今回の「鯉シリーズ」は、さいたま市の鯉と鰻の問屋・鯉平が経営する東京・池袋の鰻店「鰻のまんまる」を訪問。杉田智昭店長にサービス面での工夫や、お店としての今後の展望などについてお話を伺った。

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「鰻のまんまる」の外観

「まんまる」池袋店は平成10(1998)年にオープン、来年には20年を迎える。テーブル席・カウンター席合わせて15席と店内はこぢんまりしているが、場所柄、平日の昼時は70〜80人ほどの来客があり、土曜日にはさらに増えて100人前後と常に大賑わい。客層は30〜50代が大半だが、ここ数年は中国人を中心とした外国人観光客が増えて全体の10%ほどを占めるようになったため、中国語・英語表記のメニューを用意して対応している。

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店内の様子

鯉のメインメニューは「洗い」。主な鯉の産地は滋賀・福島・群馬で、1尾の重さは1〜1.2kgほど。柔らかすぎず硬すぎず、ちょうどいい歯応えで、普通の刺身とは違った食感が特長。

「日によっても使う鯉によっても身の締まり方が違ってくるので、調理の際のお湯の温度は臨機応変に調整します。『鯉は臭いが気になる』というお客様もいらっしゃいますが、実際に召し上がると『これなら食べられる』という反応がほとんどで、『鯉のイメージが変わった』と喜んでくださるお客様も多いです」。

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「鯉の洗い」

また、骨切りにした鯉の身を串に刺した「鯉の炙り串」も人気メニュー。酒のつまみに合うため少し濃いめの味付けにしてある。柚子胡椒が少ないと味が立たず、多いとしょっぱすぎてしまうため、乗せる柚子胡椒の量の調整も難しいという。

鯉を注文するのは40〜50代で、今まであまり食べる機会のなかった利用客が多く、鯉の消費は横ばい状態が続いている。杉田店長は「多くのお客様に召し上がっていただきたいので、『どうですか?』とお勧めするようにはしています。もちろん最終的に注文するかどうかはお客様が決めることですが、いろいろなメニューに手を広げるよりは、『洗い』を大きな柱としてお客様に認知していただきたいと考えています」と、売れ筋商品である「洗い」を浸透させて消費の拡大を図っていく考えを示した。

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骨切りした鯉の身を串に刺した「鯉の炙り串」

一方、うなぎは「ひつまぶし」「上うな重」「うな丼」「白焼」など豊富なメニューが揃うが、中でも売れ筋商品は「上うな重」。「肝焼き」「くりから」「バラ身」など串ものも充実していることから、夜になると串ものを片手に酒を楽しみ、そのあとに食事という利用客も多い。

「上うな重」は主に鹿児島産を使用し、サイズは5P。こだわりについては「うなぎもその日によって良し悪しがあるので、その辺を見極めて焼きすぎないよう心がけています。オーソドックスなスタイルが一番おいしいと思いますので」と話す。このほか、天然うなぎ以上の栄養価とおいしさを目指して品種改良された宮崎産の「和匠うなぎ」を使った「宮崎和匠うな重」も、数量限定ということもあって人気が高い。

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「上うな重」

うなぎの消費について、杉田店長は「一昨年は店全体の売上が過去最高を記録しました。お客様の数も売上も増えています」と、順調に伸びていることを強調。混雑する昼時は逆に回転率がよく、その分多くの客が来店することが理由だが、「当店のうなぎを知って食べにきてくださるのは本当にありがたいことです」と、手応えもはっきりと感じている。

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「現状をしっかり維持してお客様にいいものを提供しながら、どういう接客をしていくか、何をすればお客様にもっと喜んでいただけるかを常に考えています。並行して人材を育てることにも力を入れたいですね」。

今後の展望について杉田店長はそう話す。メニューをどう説明すれば利用客がわかりやすいかなど、利用客に満足してもらえるように、日々忙しい中でもさまざまな取り組みを考えながら奮闘している。

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杉田 智昭店長

「鰻のまんまる」池袋店
〒171-0014 東京都豊島区池袋2-13-8 光陽ビル1階
TEL:03-3980-5616


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美味!!「鯉」メニューのお店23〈2017年1月25日号掲載〉 [鯉シリーズ]


埼玉県深谷市
鯉・うなぎ料理「あらやま」

年に1回でも常連 お客様がいる限り、未来は明るい

新年2回目の連載「鯉シリーズ」は、埼玉県深谷市にある、鯉・うなぎ料理をメインに扱う「あらやま」を訪問。二代目の荒山周社長に料理のこだわりや、今後の展望などについてお話を伺った。
「あらやま」は元々、同県北川辺町(現加須市)と岩槻市(現さいたま市岩槻区)で養殖鯉を生産しており、その流れから、現在の店舗に隣接する農業用水でも鯉の養殖を行うようになった。その後、農業用水を釣り堀として活用し始めたが、釣った魚をその場で調理して釣り客に味わってもらおうと、およそ40年前に今の場所に「あらやま」を開店。鯉料理に加えてうなぎ料理を提供するようになった。

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「あらやま」の外観

提供する料理は「あらい」「鯉こく」と、鯉のすり身を使った「さつまあげ」で、1尾の重さは1kgほど。
「鯉は冬のような寒い時季の方が脂が乗っていておいしく、コクもよく出ます。あまり煮込んでしまうと味がまったりしすぎるので作りおきはせず、お客様の注文を受けてから調理するようにしています」。

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「鯉のあらい」(上)と「鯉こく」

荒山社長は料理のこだわりについてそう話す。味付けもみそ以外は何も入れず、シンプルな味が特長。「あらい」もオーダーを受けてからさばくため、新鮮さを味わうことができる。

一方、ウナギに関してはその都度良質なものを使用し、サイズは5Pと3.5Pが主流。「上うな重」「特選うな重」「特上うな重」の3種類があり、「上うな重」が一番人気となっている。
「数年前にやや需要が伸び悩んだ際には他のメニューも始めようかと迷いましたが、ウナギに手が回らなかったり質が落ちたりしては困るので、我慢して続けました。やはりお客様は『うな重』を目当てに来てくださるんですから」。

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「上うな重」

県内の川越市や東京都内から車で来店する客も多いが、荒山社長は「わざわざ遠くまでご来店いただくのはありがたいこと」と強調する。
「年配のお客様が大半ですが、最近は三世代でご来店されるお客様も増え、当時まだ幼かったお孫さんが成長してカップルで来店することもあります。『大きくなったな』と驚きますが、本当に嬉しいですね」。

荒山社長も2人の子供がまだ赤ちゃんだった頃に馴染みの客が世話をしてくれたといい、アットホームな雰囲気が魅力でもある。
若い世代にもっと鯉を食べてもらおうと、宴会のコース料理でも鯉を提供。「さつまあげ」を注文する若い客も多く、「おいしい」と評判は上々だ。

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「鯉のさつまあげ」

「『疲れたから元気つけようと思って』『子供が結婚するのでその顔合わせで』など、お客様がウナギを食べに来店される理由はさまざまですが、そういうお客様がいる限り、鰻屋さんもまだ先は明るいと思います。年に一回でも常連ですし、ちょっとしたことで来店いただくだけでもありがたいです。その中で、つまみ感覚でも『鯉のあらい』をご注文いただければ嬉しいですね」。
どんなに小さな理由でも来店する客がいる限り、まだまだ鰻屋の将来は期待できるだろう。

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荒山 周社長

鯉・うなぎ料理「あらやま」
〒369-1105 埼玉県深谷市本田5833-2
TEL:048-583-3182


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美味!!「鯉」メニューのお店22〈2017年1月10日号掲載〉 [鯉シリーズ]


帝釈天あっての柴又 地域一体となって盛り上げる!

葛飾区柴又「ゑびす家」

平成29年が幕を開けて最初の「鯉シリーズ」は新年らしく、映画『男はつらいよ』シリーズの舞台として知られる東京の下町・葛飾区柴又の老舗料亭「ゑびす家」からスタートしたい。

「ゑびす家」は1783(天明3)年の創業で、230年以上もの歴史を持つ。元々は団子屋から始まったが、明治時代に入ってうなぎを中心とした川魚料理を扱うようになった。1階の座敷からは滝の流れる池を眺めることができるほか、大広間は100人以上を収容できるなど、1人でゆったりと、宴会で賑やかにといろいろな楽しみ方ができるのも自慢。比較的年配の利用客が中心だが、観光地とあって若いカップルや家族連れなど客層はさまざま。

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「ゑびす家」の外観

「創業当時はまだ帝釈天への参道も整備されていませんでしたが、徐々に参拝客が増えるとともに参道も賑わいを見せ始め、周辺のお店も食事を提供するようになりました」。
斉藤太治専務は川魚料理を扱うきっかけについてそう説明する。近くを江戸川が流れていることもあり、当時は地産地消という意味でうなぎや鯉は江戸川で捕れたものを使用していた。現在では養殖うなぎがほとんどを占めるが、利用客から天然うなぎを希望する声があれば問屋に頼むこともある。

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「うな重」

産地は主に鹿児島・宮崎・三河一色で、1尾の大きさは3.5〜4.5Pが中心。「うな重」と「上うな重」が半々程度で売れ筋商品となっているが、日曜・祝日は「上うな重」が特によく出るという。また、「鯉のあらい」「鯉こく」「うなぎご飯」と団子がセットになった「川魚御膳」も人気メニューだ。

「うなぎはもちろん、お客様から注文をいただいてから調理し、焼きたて・蒸し立てをお出しするように心がけています。団体の観光のお客様の場合は旅行会社の添乗員にお客様が何分後に到着するかを聞き、来店の時間に合わせてお出しします」。

斉藤専務はこだわりについてそう話す。焼きたて・できたての「うな重」は利用客からも好評を得ている。ここ数年は利用客の食い控えで消費も厳しい状態が続いていたが、2年ほど前からやや上向きになっているという。

「今年はけっこう多くのお客様に召し上がっていただきました。一時期お客様が離れたときでも、刺身や天ぷらといったうなぎ以外の品目でカバーできましたので売上としては大きな減少にはなりませんでしたが、ようやく観光のお客様を中心に需要が『うな重』に戻りつつあります」。
5〜6名の団体客が全員「うな重」を注文したり、顔なじみの利用客が子供が里帰りすると必ず「うな重」を注文したりすることも、消費の回復に拍車をかけているようだ。

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「鯉のあらい」

一方、鯉料理は「鯉のあらい」「鯉こく」のほか、両方セットになった「川魚御膳」が売れ筋商品。産地は茨城県で、1尾は1.7〜1.8kgと比較的大きく、「あらい」なら8人前が料理できる。
「『鯉こく』には身が大きい方が適しています。3日間ほど煮ることで骨も柔らかくし、骨まで召し上がっていただけます。『あらい』はからし酢味噌であまり甘くなく、酒のつまみにも合います。厚すぎず薄すぎず、ちょうどいい歯応えが特長です」。

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「鯉こく」

食わず嫌いの客でも抵抗なく食べることができ、「初めて食べたがおいしかった」と評判も良好だ。
一時期、コイヘルペスが流行した際には消費が大きく落ち込んだが、他のメニューでカバーし、今では消費は緩やかに回復傾向にある。ただ、鯉を注文するのはやはり年輩客が多かったため、若い世代にもっと親しんでもらおうと「川魚御膳」を始めた。食べやすい量と大きさにしてあることで注文する若い客は以前より増え、「思ったより臭気がない」という声も寄せられている。

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広々とした店内

一時期より戻っている川魚の消費を維持しながら、今後はどのようにお店を盛り上げていくのだろうか。
「まずはお客様に喜んでいただけることが一番です。帝釈天あっての柴又ですから、お客様から『柴又はいいところだ』といわれるように、そしてお客様にたくさん召し上がっていただけるように、町をあげて盛り上げていきたいですね」。
斉藤専務はそう話し、昔からの味を残しつつ、地域と一体となって町全体を盛り上げていくことの大切さを強調した。

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斉藤 太治専務

「ゑびす家」
〒125-0052 東京都葛飾区柴又7-3-7
TEL:03-3657-2525

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美味!!「鯉」メニューのお店21〈2016年12月15日号掲載〉 [鯉シリーズ]


同じ味を続けることでお客さんも注文してくれる

埼玉県加須市「うなぎ荒川」

鯉料理を提供しているお店を紹介する「美味!!『鯉』メニューのお店」シリーズ。今回は埼玉県加須市にある、川魚料理を中心とした「うなぎ荒川」を訪問。荒川髙代表取締役に、こだわりのうなぎ・鯉料理や消費の動向などについてお話を伺った。
「荒川」は埼玉県加須市の東武伊勢崎線「加須駅」から車でおよそ10分。交通量の多い国道122号線沿いに面している。ウナギやコイはもちろん川魚全般を扱っており、バラエティーに富んだ豊富なメニューの数々が自慢。ほかのうなぎ屋や川魚料理店では味わえない個性的なメニューも多数存在する。

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「うなぎ荒川」の外観

奥の座敷に通されると、既に4〜5人前はあるという豪華な「鯉の活造り」が用意されていた。
「この辺りは利根川と荒川が近いし、昔からコイを食べる習慣があったよ」。
荒川社長は早速そのように教えてくれた。コイは主に隣接する群馬県産で、1尾の重さは1kgのものが多い。中でもお勧めは「こだわりの鯉定食」で、「鯉のあらい」「鯉こく」「鯉のうま煮」がセットで一度に味わえるという、鯉好きにはたまらない一品。

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上:「鯉のあらい」「鯉こく」「鯉のうま煮」がすべて味わえる「こだわりの鯉定食」
下:「鯉の活き造り」

「鯉こくは作ってから少し寝かせておくことでより濃厚な味が出るんだ。うま煮は骨を柔らかくすると身が崩れちゃうので、骨をそのまま残している。そうすることでコイ独特の歯応えが出るしね。砂糖と醤油で味付けしているので、少し甘いのも特長だよ」。
荒川社長は味のこだわりについてそう話す。単品でも「鯉のあらい」「鯉こく」「鯉のうま煮」は人気商品となっていて、およそ半数の客が注文。また、化粧箱に鯉が1匹入ったうま煮も土産用として注文が多い。メニューが豊富なためコイの消費も特に減ってはおらず、荒川社長も「常に同じ味で出しているからだと思う。毎回味が変わっていたらお客さんも満足できないしね」と話す。

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化粧箱入りの「鯉のうま煮」は土産用として人気がある

一方、ウナギに関してはさらに人気が根強く、9割近くの利用客が注文する。鰻重から一品料理までメニューはさまざまだが、売れ筋商品は5Pサイズを使用した「竹鰻重」。
「特に常連さんは『この味がいい』『この柔らかさがいい』と言ってくれるし、好きなお客さんは本当によく注文してくれるんだよ。ウナギは蒸すだけで20分かかるから、お客さんには30分くらい待ってもらうことになるけど、やっぱり出来立てを味わってもらいたいからね」。
そのため、ウナギを注文し、待っている時間で鯉のあらいやうま煮などをじっくりと味わうこともできる。

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1日10食限定の「鰻のきも焼のせ 竹の鰻丼ぶり」

一時期、価格が高騰したことがあったが、ウナギの消費も特に落ちていることはなく、横ばいの状態が続いているという。メニューの種類が豊富なことに加え、やはりほとんどの利用客が注文していくことが消費を下支えしているようだ。
最近始めたメニューで人気が高まっているのが、うな丼にうなぎのきも焼きを乗せた「鰻のきも焼のせ竹の鰻丼ぶり」。「プレミアム丼ぶり」と位置付け、2種類の味が同時に味わえるとあって、1日わずか10食限定という貴重なもの。荒川社長も「数量限定でお客さんにはまだ完全には浸透していないけど、これからもっと浸透させていきたいね」と意気込む。

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「若い世代は『鯉のうま煮』や『鯉こく』といってもなじみがないかもしれないけど、比較的年配のお客さんは川魚全般の味を知っている。たくさんメニューがあるのがうちの強みだと思うけど、やっぱりお客さんが注文してくれないことには始まらない。そのためにはやっぱり同じ味で続けていくことじゃないかな。そういう気持ちでこれからも続けていきたい」。
荒川社長は「川魚なら『荒川』という意識を、今まで以上に多くのお客さんに浸透させたいしね」とも強調していた。

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「うなぎ 荒川」の荒川高社長

「うなぎ荒川」
〒347-0123 埼玉県加須市下崎367-2
電話:0480-73-2108


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美味!!「鯉」メニューのお店20〈2016年12月5日号掲載〉 [鯉シリーズ]


おいしい料理の提供には手間を惜しまず

福島県会津若松市 「会津東山温泉 向瀧」

今回で20回目となる「『鯉』メニューのお店」シリーズは、全国の市町村で養殖鯉の生産量第1位を誇る福島県郡山市の老舗旅館「会津東山温泉 向瀧」を訪問。6代目の平田裕一社長に、鯉料理のこだわりやサービス面での心がけなどについてお話を伺った。

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上:「向瀧」の外観 下:部屋から庭園を見下ろせるのも自慢

会津の名湯「東山温泉」の歴史は非常に古く、740年代の天平年間に発見されたともいわれている。当旅館は元々「狐湯」として会津藩上級武士の指定の保養所となっていたが、1873(明治6)年に平田家が引き継ぎ、「向瀧」として営業。現在でも代々続いている家業として湯守をしている稀少な温先旅館。橋の下にある瀧に向かって建っていたことから「向瀧」という名称が定着した。部屋数は全部で24室あり、庭が広いのが自慢。12〜13の部屋は中庭に面しているため、特に秋には色鮮やかな紅葉を見ながら過ごすことができる。
「30代〜60代まで幅広いお客様にお越しいただいていますが、特にマンション育ちのお客様にとっては日本家屋の建物が逆に非日常的な空間になって新鮮なようです」。
平田社長は人気の理由についてそう話す。

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鯉料理は「鯉の旨煮」と「鯉のたたき」の2品を提供。会津の「鯉の旨煮」は江戸時代、当時の会津藩家老・田中玄宰が自ら手を出して作らせたといわれる古いもので、以来、貴重なタンパク源として魚料理の中で最も位の高い料理となった。6時間じっくりと煮込んで一晩寝かせることでより身が締まり、醤油と砂糖を加えて甘じょっぱく煮ているが、鯉本来の味が引き立つように仕上げてあり骨も気にならない。平田社長も「東山温泉には何軒か旅館がありますが、『鯉の旨煮』を提供しているのは当館だけだと思います」と強調する。

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上:「鯉のたたき」 下:「鯉の旨煮」

また、「鯉のたたき」は以前は「あらい」として出していたが、2002(平成14)年に平田社長が就任した際、「やや小骨が気になるので、細かく刻んでみたらもっと食べやすいのではないか」という自身の発案で誕生したもの。鯉は地元・会津産のものを使用し、1尾から「旨煮」なら3〜4人前、「たたき」なら10人前を調理できる。
「その土地の伝統の料理を召し上がっていただかないとお客様は増えないのではないかと思います。料理は時代によって味や好みが変わってきますし、やはり『旨煮』にしてもお客様から『おいしい』と言っていただけるものを作っていかなければなりません。そのため煮込む時間も以前より長くしました」。

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そう考えていた平田社長は就任後、料理を大幅にリニューアル。「旨煮」を鍋に並べる際にもなるべく均等に火が回るようにした。「おいしいものを作る」という一心で醤油も変えたが、今まで鯉をあまり好きではなかった宿泊客が「実際に食べてみたらおいしかった」と感想を述べるケースも多いという。
「やはり鯉の消費は一時期に比べてかなり減っています。会津でも昭和の終わり頃から人を集められる食材が優先され、鯉料理を味わえるお店も少なくなってしまいました。おいしさをきちんと伝えられる料理を出すには調理の過程を省略しないことです。それが最終的に消費の回復につながるのではないでしょうか」。
平田社長は「その場所でしか食べられない料理を出し、山間部の方でも積極的に鯉料理を出すように変えていくべき。同時にじっくり時間をかけておいしいものを提供することです」とも強調する。

「最近はファーストフードのようにいかに時間を短縮するか、そればかりが研究されすぎていますが、料理は簡略化してしまうと味も質も落ちます。生産性を重視し、おいしいものを提供するには料理のプロセスはむしろプラスしてもいいでしょう。そのためには余分な動きを減らすなど、調理を担当するスタッフの動きを見直すことも大切です」。
調理現場のスタッフ1人1人が「時間をかけておいしい料理をお客様に提供する」という意識を持つことも不可欠だろう。

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「会津東山温泉 向瀧」の平田 裕一社長

「会津東山温泉 向瀧」
〒965-0814 福島県会津若松市東山町大字湯本字川向200
電話:0242-27-7501


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美味!!「鯉」メニューのお店19〈2016年11月15日号掲載〉 [鯉シリーズ]


さいたま市南区 
うなぎ川魚料理店「小島屋」

鯉の魅力、栄養価をいかにアピールするか

今号の「鯉シリーズ」は、さいたま市南区の創業200年以上の老舗川魚料理店「小島屋」を訪問。稲垣武博総料理長に鯉料理のこだわりや、鯉の消費の変化などについてお話を伺った。

「小島屋」はJR京浜東北線の「南浦和駅」から車でおよそ10分。幹線道路から細い道を入った住宅街の中にある。老舗旅館のような広々としたずっしりと重みのある店構えが特徴だ。

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老舗旅館のような店構えが特徴の「小島屋」の外観(上)と店内(下)

提供する鯉料理は「鯉のあらい」と「鯉こく」の2品。産地は群馬県・福島県・栃木県などさまざまで、1尾の重さは1.2〜1.5kgほど。1尾から「あらい」なら5〜6人前、「鯉こく」なら4人前が調理できる。稲垣総料理長は「川魚は生きた状態でさばかないと商品になりません」と、鮮度に神経を使っていることを強調する。

「あらい」は酢みそにしょうがが付くが、これはかつて周辺が田畑に囲まれていて、畑で収穫されたしょうがを使用していたことの名残。しょうがの香りで鯉の臭みをやや抑えるという。骨を完全に抜くと身が崩れてしまうので、客が気にならない程度に骨を小さくしつつ、独特の歯応えは残すのもこだわり。また、「鯉こく」のみそも手作りだが、みそ自体を完成させるのに3〜4ヶ月はかかるため、年に1〜2回しか作ることができない。

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「鯉のあらい」(上)と「鯉こく」(下)

「発酵が進まないといい味が出ませんので、実際に料理に使用するのはさらに先になります」。
材料の高騰で「鯉こく」1人前を作るのにも原価がかかるが、手間をかけているとあって利用客からは「懐かしい味だ」と好評だ。ただ、10数年前に発生したKHVの影響で消費は確実に減っているという。一時より戻りつつあるものの圧倒的に高齢者が多く、若い世代は食わず嫌いのような傾向がある。

消費拡大に向けて、稲垣総料理長は「鯉は海水魚と比べて華やかさに欠け、調理法も限られています。鯉の魅力や栄養価をどうアピールしていくかが重要でしょう。川魚料理自体が珍しいことで消費が伸びていく可能性もないとはいえませんが」と話す。「小島屋」はメニューの種類が比較的少ないが、逆にそれによって鯉料理に注目が集まる仕掛けになっている。

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1尾の鯉から「あらい」なら5〜6人前、「鯉こく」なら4人前が調理できる。

一方、うなぎについては3P〜4Pの太ものが主流で、産地は鹿児島・愛知・静岡など、その時期に最もよい素材を使用。炭火でパリッと香ばしく焼き上げた身の厚い大ぶりのうな重で、利用客からも「食べ応えがある」と満足する声が寄せられている。特に土・日はここ数年、「子どもにおいしいうなぎを食べさせたい」という家族連れで賑わいを見せており、子どもがおいしそうにうなぎを頬張る様子を見ると「今後消費が伸びる可能性はある」と感じるという。

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「もちろん、資源問題や完全養殖の実現化といった問題もありますが、それらが解決できればうなぎに関してはまだ望みはあるのではないでしょうか」。
少子化が進んでいるからこそ、鯉についても特に将来の消費を担う子供たちにその魅力をどうアピールしていくか、知恵を絞る必要があるだろう。

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「小島屋」の小嶋正行社長(上)と、稲垣武博総料理長(下)

うなぎ川魚料理店「小島屋」
〒336-0015 さいたま市南区太田窪2166
電話:048-882-1382

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美味!!「鯉」メニューのお店18〈2016年11月5日号掲載〉 [鯉シリーズ]


栃木市 うなぎ・甘露煮「せしも」

今までにない味わい方で鯉の魅力をPR

鯉料理を提供しているお店を紹介する「美味!!『鯉』メニューのお店」シリーズ。今回は栃木市にある完全予約制の「うなぎ甘露煮 せしも」を紹介したい。
100年以上前、この地は船着場として栄え、荷物を小型の船に積み替えて東京へ持っていくための要として重要な役割を果たしていた。当時はウナギやコイ、ナマズなどたくさんの川魚が捕れ、周辺に多数あった宿屋や飲食店に川魚を卸そうと、現在の瀬下知也店主の曽祖父が本格的に川魚の取扱を始めたのがきっかけ。

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「せしも」の店構えと店内の一部

「多いときには行商が20人ほどいたそうです。当時はまだスーパーがありませんでしたので、今でいうスーパーのような存在ですね。祖父の代までは川魚を生の状態で卸していましたが、行商がいた当時はさばいたウナギやコイを売っていました。父の代になって『今後生の魚を煮たり焼いたりする家庭が減ってくると思う。うちで煮たり焼いたりしてはどうか』と、甘露煮などの販売を始めました」。

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鯉のあらいは、あらいの下に大根おろしを置くことで水分を吸収する。下は「お重 並串」

瀬下店主はそう振り返る。瀬下店主自身は若い頃、世界中を旅していたが、各国の食べ物を食べる中で「やはり和食はすごい」と思うようになった。「小さい頃はウナギをさばくということが当たり前だと思っていましたが、外へ出ると当たり前ではないことがわかりました」と話すように、ウナギをさばくのがすごいことだと気づき、同時にコイを食べることの大切さも認識したという。
「せしも」ではコイ料理は「鯉のあらい」を提供。店内で味わうのはもちろん、持ち帰りもできる。産地は茨城県で、1尾の大きさは1.5kgほど。仕入先の生産者は餌も製造しているが、原料に使う霞ヶ浦の魚にタンパクなどを入れている関係で独特の甘みがある。また、冬場には「鯉の旨煮」も提供。
「旨煮は二日間煮て、三日目は味をよく染み込ませることで骨まで柔らかく食べられます。うろこを外すと身が崩れてしまうので、うろこはつけたままにします」。
瀬下店主はこだわりについてそう話す。ただ、平成15年に発生したKHVの影響もあり、コイの消費は今も減少の一途をたどっている。「せしも」でコイを注文するのも圧倒的に年輩の利用客が多いという。

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鯉の三枚おろしの様子

一方、ウナギは「丼ぶり 小串」「お重 並串」「お重 特串」などが主なメニューだが、売れ筋商品は「並串」。1尾の大きさは3P〜5.5Pが中心。「共水鰻」を100%使用しているのは栃木県内では「せしも」のみで、天然ウナギに近い風味と高い栄養価で甘い脂が大きな特長。美肌効果が高く、「美肌鰻」とも呼ばれている。
「夏はそうめんなどさっぱりしたものを食べますが、そこでウナギを食べても逆においしいんですよ」。
瀬下店主はおいしさをさらにPRする。

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鰻の裂きと焼きの光景

「80歳を過ぎたおばあさんが鯉のあらいを3ヶ月間食べ続けてヤケドが治ったり、歯肉がついて入れ歯を作れたりという例がありますが、こうした鯉の効能や高い栄養素をまだ知らない方が多いです。当店ではあらいは酢みそと、トマトソースをシャーベット状にしたものと二種類の味で楽しめます。希少価値もありますし、こうした食べ方を広めていきたいですね」。
瀬下店主は消費の拡大についてそう話す。ウナギについても「食材としての力はズバ抜けていて、焼いただけで旨さが違うのがわかる」という。どちらも栄養価のある魅力ある商材だけに、今までにはなかった味わい方で、特に若い世代にその美味しさに触れてもらえることを望みたい。

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瀬下 知也店主

うなぎ・甘露煮「せしも」
〒329-0316 栃木県栃木市藤岡町石川315-2 完全予約制
電話:0282-67-2551


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美味!!「鯉」メニューのお店17〈2016年10月25日号掲載〉 [鯉シリーズ]


ひと工夫の提供で若い世代にPR!
東京・台東区「浅草うな鐵」

今号の「美味!!『鯉』メニューのお店」シリーズは東京の下町・浅草にある「浅草うな鐵」を訪問。小野義哲店長に、鯉料理のこだわりや消費拡大へ向けたアプローチ方法などのほか、メインで扱っている鰻についても合わせてお話を伺った。

「浅草うな鐵」は昭和56年4月に創業。2店舗目となる「浅草駅前本店」は、すぐ目の前を隅田川が流れ、店内から東京スカイツリーが一望できるほか、春になると隅田川の土手沿い一面に満開となる桜を楽しむこともできる。都内でも無類の観光地という場所柄、近年は外国人観光客、特に中国・韓国の若い観光客が多くなっているが、10年以上通い続けてくれている常連客もおり、地元に支えられている。

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「浅草うな鐵」の外観と店内の様子

鯉料理は「鯉のあらい」を提供。産地は福島県で、1尾の重さはおよそ1.8〜2kgと比較的大きめ。1尾から「あらい」8〜9人前を調理することができる。約45度のお湯に熱湯を足して湯がくことで独特の歯応えが出るのはもちろんだが、酢みそにゆずこしょうを混ぜており、酢みそのさっぱり感に、ゆずこしょう独特の風味と辛さの両方を味わうことができるのも特長。また、こうすることで「ゆずこしょうの風味で川魚特有の臭みも気にならなくなります」と、小野店長は言う。

「鯉のあらい」を注文するのは50代以上の年配の客が中心。提供している店が少ないこともあり、来店時には必ず注文する客も多い。近年の「浅草うな鐵」での鯉の消費自体は大きな増減はなく、横ばい状態が続いているというが、やはり若い客層が鯉という食文化になじみがないことは否めない。
「コース料理は幅広いお客様に注文いただくので、コースに含まれているサラダと『鯉のあらい』を混ぜて出すなど、提供の仕方を工夫しております」。
小野店長は若い世代に向けたアプローチ方法についてそう話す。

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「鯉のあらい」

一方、うなぎについては主に鹿児島産と愛知三河産を使用し、サイズは4.5Pの1種類のみ。以前は5Pを使用していたが、懸念される資源問題のことを考え、4.5Pに切り替えた。1尾を使用する「松重」、7〜8割を使用する「竹重」、半分を使用する「うな丼」などがあるが、やはり売れ筋商品は「松重」。柔らかく風味豊かな焼き加減と、深く濃厚な味わいが自慢の秘伝のタレが人気を博している。

また、客の約半数が注文するのが東京初の「浅草ひつまぶし」。地焼きでうなぎとタレをしっかりからませながら香ばしく焼き上げるのが特長で、名古屋とはまた違ったおいしさが楽しめることから利用客からも好評。さらに平成15年からは塩味に挑戦。2年の歳月をかけて「塩タレ」を考案し、独自メニューの「塩ひつまぶし」を世界で初めて完成させた。

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「うな重(松)」と「浅草ひつまぶし」

「身は塩だけで焼き、タレは白醤油と砂糖で甘さを出しています。甘さとしょっぱさの絶妙なバランスが自慢で、『ひつまぶし』の注文の中で2〜3割を占めます。珍しいメニューですが、お客様からは『おいしい』と好評です」。
小野店長は『塩ひつまぶし』のこだわりについてそうPRする。うなぎやひつまぶしに対する知識が豊富な客が気軽に「もっとこうした方がいいのではないか」と言えたり、スタッフもそれに応えたりできるようなフレンドリーな雰囲気も魅力だ。

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業界では現在、職人不足の問題が深刻化しているが、「12名いる職人は皆、20代〜30代です。お互いに距離感が近く、親しい間柄ですから比較的溶け込みやすいと思います」と、新人の職人でも慣れやすい環境を整備している。
昨年9月には運営会社が変わったが、「それにより、私たち一人一人が今まで以上にお店のマネージメントも考えるようになりました」と小野店長は話す。

「どうすればもっと多くのお客様に来ていただけるか、スタッフ一人一人にそれを考えることが求められます。そうすることで必然的にお客様にいい商品を提供することにつながるでしょう。皆で考えながら、密度の濃い仕事をしていきたいと思います」。
小野店長はそう目標を語った。

「浅草うな鐵」本店
東京都台東区花川戸1-2-11
電話:03-5830-3302

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美味!!「鯉」メニューのお店16〈2016年10月15日号掲載〉 [鯉シリーズ]


茨城県石岡市 割烹旅館「いづみ荘」

「鯉の美味しさを知っていただきたい」

今回の「鯉シリーズ」は鯉料理を提供しているお店として、前号で掲載した茨城県行方市の理崎養魚場の取材の際に訪問した同県石岡市の割烹旅館「いづみ荘」を紹介したい。霞ヶ浦のほとりに位置し、1階には和食レストランを併設、気軽な食事、家族との宿泊といろいろな楽しみ方ができる。また、地元で養殖された鯉を使用した「あらい」と「旨煮」のほか、脂の乗った国産の「うなぎ蒲焼」や「鮒すずめ焼き」など新鮮な川魚料理を味わえるのも自慢。女将の石本惠子さんに鯉料理のこだわりやサービス面などについてお話を伺った。

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「いづみ荘」の外観

割烹旅館「いづみ荘」は昭和28(1953)年、釣り堀として創業。平成10(1998)年にリニューアルオープンを遂げた。すぐ目の前に国内第二位の面積を誇る風光明媚な霞ヶ浦が広がり、部屋からは霞ヶ浦から昇る朝日、筑波山へ沈む夕日が一望できるロケーションが魅力。市内に点在するゴルフ場からの帰りの客のほか、特に団体客や宴会の利用客は水戸市を始めとして近隣の市町から訪れる客が多く、中には東京や埼玉から訪れる客も。マスコミで紹介されたのを知って訪れ、「やっと来られた」と喜ぶ客や、実際に宿泊して目の前に広がる霞ヶ浦の景色に驚いた客もいるという。1階には食事処を併設、簡単な食事だけ楽しむこともできる。最近は50代〜70代の高年齢層の団体客が同窓会として利用する例も増えている。

「自然体でアットホームな雰囲気づくりを心がけ、お客様におうちに帰ってきた感覚を味わっていただけるように『お帰りなさい』という挨拶でお出迎えしています」。
女将の石本さんはおもてなしの面での工夫についてそう話す。
食材は地産地消にこだわり、野菜や卵なども地元のものを使用。特に川魚料理がおすすめで、中でも「鯉のあらい」「鯉の旨煮」「鯉こく」(要予約)「うな重」は高い人気を誇っている。鯉は隣接する小美玉市で養殖されたものを使用。1尾約2〜2.5kgと比較的大きめで、1尾であらいなら8人前、旨煮なら5人前が調理できる。

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「鯉のあらい」

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「鯉の旨煮」

「あらいはプリプリとした独特のフレッシュな食感が魅力です。新鮮な鯉を少し熱めのお湯で湯がいてから冷水で締めますが、水には氷は入れていません」。
女将の石本さんがそう話すように、食べてみると独特の食感が口に広がる。旨煮は地下水を使用したいけすで長時間かけて臭いを取り除き、ほどよい甘さの秘伝のタレでじっくりと味付けした絶品。石本さんも「時折、女性のお客様で旨煮の見た目に抵抗があるという方がいらっしゃいますが、当館で出された旨煮は召し上がってくださいます」と、おいしさの違いを強調。

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「うな重」

また、うな重は主に三河一色産と静岡産を使用。脂の乗ったふっくらとしたうなぎを先代から受け継いだ秘伝のタレで香ばしく焼き上げており、先にほかのメニューを味わってから最後にうな重を楽しむのがポイント。

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団体客用の宴会場も併設

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一方で、特に鯉は低迷している需要をいかに取り戻すかが課題といえるが、どのような対策を考えているだろうか。
「まずは若いお客様に召し上がっていただく必要があります。初めて召し上がるお客様には少し小さめのものを試食としてサービスでお出しし、鯉の美味しさを知っていただくようにしています。そういった取り組みを続けていきたいですね」。
一度味わってもらうことで初めて今後につながる。それを地道に続けていく姿勢も大切だろう。

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女将の石本惠子さん


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茨城県の網いけす養鯉の現況! [鯉シリーズ]



今回の鯉シリーズは鯉料理を提供しているお店はお休みし、番外編として全国でトップの生産量を誇る大産地・茨城県行方市を訪れ、霞ヶ浦北浦小割式漁業協同組合の組合長で、養殖場を持つ理崎茂男氏に養鯉の現状などについてお話を伺うとともに、所有する池を見学させていただいた。茨城県、特に霞ヶ浦北浦では湖内に張った網を生かして魚を飼う「網いけす養殖」という方法で鯉の養殖を行っており、理崎組合長は養殖した鯉を問屋や料理店を中心に卸している。

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霞ヶ浦北浦小割式漁協の事務所

「網いけす養殖」は網で水面を区切って行う養殖方法のひとつで、「小割式養殖」とも呼ばれる。現在は海面でハマチやタイなど魚類養殖の多くがこの方法で行われているほか、長野県の諏訪湖や茨城県の霞ヶ浦の鯉の養殖のように湖沼でも採用されている。竹や丸太の枠に網を取り付け、直接またはドラム缶や樽などの浮きで水面に浮かべる従来の方法に加え、最近では投餌や取り揚げなどの作業の足場を備えた鋼鉄製の枠に発泡スチロール製の浮きを使う方式も普及しているという。

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およそ5m四方の池を97面所有している

「光熱費がかからないのでコストの削減になるほか、大きさごとに分けて飼育しているので出荷の際に取り揚げやすいのが大きな特長です。また、スペースが限られている池や沼と違って魚が擦れたり傷んだりしにくいという利点もあります」。

理崎組合長は「網いけす養殖」のメリットについてそう紹介した。ほかにも、陸上池に比べて水の交換がいいため、多量の魚を飼育することができるという利点もある。網の大きさは縦5m、横5m、高さ3m。湖底に打ち込んだ支柱に網をつるし、理崎組合長は全部で97面を所有している。

一方で、風が強かったり台風に見舞われたりすると魚が逃げてしまうというデメリットもある。理崎組合長も「やっぱり台風や大雨の影響は受けやすく、毎年のようにあります。台風が来ないことを祈るしかないけど、自然のことですから。魚が逃げてしまうと大きな損失になりますが、そのままやり続けるしかありません」と、自然災害による損失もあることを紹介した。当然、悪天候のときには池揚げなどの作業は中止せざるを得ない。

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網いけす以外にも地下水を使用する池を所有

網いけす以外にも、地下水を使用している通常の池を所有。1尾の大きさはおよそ1〜2kgで、この大きさが最も需要があるという。年間の生産量は約80〜100t。年間を通じて5月の大型連休前、8月の盆前、12月と3回の出荷のピークがある。生産量の推移については「今年は例年よりやや落ちていますが、量自体はあまり変わりません。県全体でも昨年は1,087tで一昨年より減ったものの、依然全国1位を維持しています」と、大きな変化は出ていない。

ただ、平成15年に国内で初めてコイヘルペス(KHV)が発症した際にはやはり直撃を受けた。

「茨城県から移動禁止勧告が出されました。人体には影響ないのでお客様も特に慌てる様子はありませんでしたが、KHVをきっかけに廃業せざるを得ない生産者もいました」。
理崎組合長はそう話し、被害が深刻だったことを強調する。それ以前にも生産過剰で魚価が急落し、経営難で廃業してしまった生産者もいたという。現在では生産量も全国1位になるまで回復してきているが、どのように克服したのだろうか。

「お客様の要望どおりに鯉をお届けすることを続けてきたからだと思います。やはりお客様との信頼関係で成り立っているので、お客様から『このサイズがいい』と要望があればほぼ100%に近い形でお届けしています。どの大きさの鯉をどのくらい生産するかが難しく、最も技術のいるところですが、やはり地道にそれを続けていくしかありません」。

理崎組合長は当たり前のことが大切であることを強調する。

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鯉の池揚げの様子。年間生産量は80〜100t

また、今年の大型連休前には行方市からの依頼と補助を受け、鯉を広くPRしようと小美玉市内の道の駅で鯉の旨煮を販売したほか、鯉こくの無料配布も行った。普段食べる機会が少ないせいか利用客の反応もよく、比較的短時間で完売したという。理崎組合長も「ぜひまたやりたいですね。11〜12月の脂が乗った鯉のおいしい季節に実施してもいいかもしれません」と手応えを感じている。同時に、「あれをやろう、これをやろうと思ってもなかなか難しいですが、息子が本業として継いでくれているので、この先のことは息子に任せたいと思っています」と、将来については若い世代に任せたいという意思も示している。

「組合員の平均年齢も60歳を超えて高齢化が進んでいますが、極力ロスを出さず、全員が安心して続けていけるにはどうすべきかを考えています。『こういう鯉を作っていくのはどうか』といったことを常にお互いに話し合い、臨機応変な養殖を目指しています」。

相手の要望に合った鯉を提供するために定期的に組合員同士で意見交換を行い、次に生かしている。
 
理崎養魚場
〒311-3513 茨城県行方市手賀1517
TEL:0299-55-2055

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理崎茂男組合長(霞ヶ浦北浦小割式漁協)

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