「蒲焼店が考える“これから”」44 〜2015年6月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]
伊藤正樹店長
(うな正/浜松市北区)
『鰻屋としての個性を磨いていくことも大切』
ニホンウナギが昨年6月にIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに絶滅危惧種として登録、もうすぐ一年が経つ。
「昨年はとくに『食べられなくなる』といった心理からか、お客様の動きも強かったです。今年もそれなりの動きはあると思いますが、ゴールデンウイーク以降は静かになっています。6月からはまったく予想が出来ません。ただ、日々の仕事、取り組みが夏に反映されるのではないかと、意識しながら、精進しているつもりです」
活鰻相場は夏の需要期に向けて強含んでいる。先々週に続いて、先月31日、今月1日と愛知三河一色、鹿児島大隅地区で値上がっている。
「ここ数年、うなぎが高嶺の花となり、お客様も相場に過敏になっていると思います。今年の夏はエルニーニョ現象が発生していることもあり、夏に影響が出そうで心配な上、うなぎに対しての過剰なメディア報道も気になるところです。真面目に取り組む養鰻業、蒲焼店がクローズアップされればいいなと思います」
ウナギ資源問題が近年、大きく取りざたされる中、避けては通れない相場高騰問題。その一方、資源と同様に頭が痛いのがウナギ職人不足問題だろう。
「鰻業界のみならず、どの業界も人材不足の気がします。魅力溢れるお店作り、居心地の良い職場、言い出したらキリがありませんが『このお店で働きたい!』と言われるようなお店を模索中です」
周知のように鰻業界は近年、一変している。続くシラスウナギ不漁による相場高は無論、環境省、IUCN(国際自然保護連合)が大きな資源問題にまで発展している。来年10月には、ワシントン条約締約国会議が行われる予定で、その動向が注目されている。水産庁中心に、東アジア四ヶ国・地域ではそうした事態を回避するため、資源管理・保護の強化を進めているところだ。そうした状況下、鰻屋はこれからをどう乗り切っていくべきか。昨今は、Facebook、LINEなどあらゆるSNSもあり、全国各地の同じ鰻屋同士で意見を交換するのも容易となっている。
「様々な問題が山積していますが、お客様とのコミュニケーションを大切にしながら、コツコツ前進していきたいと私は思います。今まで以上に鰻屋としての個性を磨いていく事も大切な事かと・・・.これからの若い世代に必要とされるお店になっていけるよう。また蒲焼店さん同士の交流によって、自分の店を見つめ直す事が出来ますし、良いところは取り入れたり、相談したり、鰻屋という専門職が益々、レベルアップしていくことを望みます。地元、浜松でもうなぎ料理専門店振興会があり、天然親ウナギの放流事業があったり、蒲焼店同士が力を合わせていくことがとても大切だと思います」
[データ]
「うな正」
〒433-8105 浜松市北区三方原町467-4
電話:053-437-3451
*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中