「蒲焼店が考える“これから”」53 〜2015年10月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]
11代目店主、奥田 幸彦氏
(阿み彦/大阪市中央区)
「心をこめて焼き上げることがお客様の満足に繋がる」
新鰻年度(15年9月)〜に入り、早2ヶ月が経とうとしている。各地の専門店に話を聞けば、早いところでは“8月のお盆明けから・・・”、遅いところでも“9月に入ってから売れ行きは目に見えて落ちている”といった話が聞かれる。とくに昨年9月は厳しい残暑から、“熱中症”の話もあったほどだが、今年はそうしたことも皆無に等しく、天候不順に泣かされた感じだ。実際、売れ行きは9月以降、どのように変化しているのだろうか。
「実際、かなり悪くなっています。また今後に関してもあまり大きな期待は出来ないと思います」と厳しい現状を話す。
近年は、シラスウナギ不漁を背景に相場は高騰し、メニュー価格の値上げを余儀なくされたお店も多い。全国的に、鰻屋さんにおける客離れも不可避と見られるなかで商売、あるいは料理に対するこだわりなどはどうだろうか。
「当たり前の事ですが、美味しい鰻をお客様に満足していただくことに尽きます。飽くなき、追求心あるのみですね」
ところで、蒲焼専門店さんにとってはどのようなウナギが好まれるのか、また養鰻業者さんにはどのようなウナギを養殖してほしいのだろうか?国産、中国産、台湾産といった産地に対するこだわりはどうだろうか?
「関西の地焼きでは、やはり柔らかい鰻が一番です。また産地に別段、こだわりはありませんが、お客様の方がこだわりを持っている感じですね」
昨今、業界が注目するワシントン条約に対してはどのような意見を持っているのか?
「率直にそのようにならないことを願うしかないですね。完全養殖が将来、採算の合うように商業化されることを祈りばかりです。当店では当然、冷凍品は使わないので対策はなしです」
近年の状況からも“ウナギ資源”ばかりがクローズアップされているのは致し方ないが、鰻専門店さんにおいては、減少する職人問題も不可避だろう。対応策についてなど意見はどうだろうか。
「職人が心をこめて焼き上げること、それがお客様の満足に繋がります。その喜びを感じられる職人をいかに育てるかが、これから大事ではないかと思います」
最後に、昨今のウナギ業界を取り巻く環境は大きく様変わりしている。そのなかで“鰻専門店”として今後、どうあるべきか。
「自然環境に対する反省と、自戒を込めて、より一層、鰻に対して真摯に向かい合いたいと思います」
[データ]
「阿み彦」
〒541-0041 大阪市中央区北浜2-1-5 平和不動産北浜ビルB1F
電話:06-6201-5315
*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中