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「蒲焼店が考える“これから”」65 〜2016年3月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


渡部 卓氏
(うなぎ処 山美世(やまみせ)/島根県松江市)

『待つだけでなく、お客様にこちらから近づいていく』

早くも3月に突入、うららかな春到来も刻一刻と近づいて来た。気になる売れ行きは現在、どうだろうか。

「増加の傾向です。良い意味でお客様に『鰻は高いもの』という感覚が定着し始めていることと、シラスウナギに関する報道が、結果的に鰻自体のPRになっているのではと思っております」

近年、メニュー価格の値上げでウナギ離れが起きている。一人でも多くのお客を取り戻すための対策は?

「催事やイベントに出展し、比較的安価な商品を用意することで、一人でも多くの方に当店の鰻を召し上がって頂けるよう努力しています。待つだけの商売でなく、お取り寄せ等も含めお客様にこちらから近づいていく取組みをしております。その結果として『山美世に焼きたての鰻を食べに行こう』と思ってもらえれば本望です」

ところで、貴店が思う“いい”うなぎとは?また輸入ウナギに関しての見解は?

「当店は地焼きですが、地焼きであってもふっくら柔らかに焼き上がる鰻がいい鰻だと思っています。また、当店は2.5Pサイズの活鰻を使っておりますが、高騰によりスーパー等で単価の低い小さめのサイズが主流となり、当店の求めるサイズの活鰻が仕入れにくくなってきていると感じております。外国産鰻は、お客様の外国産に対するイメージに合わせる形で使用しておりませんが、私どもも外国産鰻に関する正しい情報を、お客様にきちんと説明できるよう勉強していかなければならないと感じます」

今年9月にワシントン条約締約国会議が南アフリカのヨハネスブルグで開催されるが、新しく規制の対象とすべき種を提案する期限は4月27日となっている。ウナギ資源の保護管理問題についても例年以上にメディアが取り上げそうだ。貴店はどのような意見を持っているか。

「ワシントン条約に対して具体的に対策出来る立場ではありませんが、何かしなければという想いから、『日本のうなぎを育てる会』に参加させて頂き、募金箱を設置してその募金を完全養殖ウナギの研究へ寄付しております」

一方、資源と同様、無視出来ないのがウナギ職人不足。貴店では職人に対してどのような見解をお持ちだろうか。

「鰻料理店ほど一つの素材にこだわった飲食店は無いと思います。昨今の日本の文化を見直す機運に乗って、飲食業というくくり以上の文化的な職業に携わるということがアピール出来れば、自ずと人は集まってくるのではないかと思います」

近年、ニホンウナギの資源問題をはじめとして、前出の職人不足問題など、ウナギ蒲焼専門店を取り巻く環境は一昔前と激変している事は間違いないだろう。そうした中、貴店では今後、“うなぎ蒲焼専門店”として、どうあるべきだとお考えだろうか。

「鰻の地域、店舗ごとの調理の多様性を生かし、その土地その土地の鰻の楽しみ方を発信していくことが大事ではないかと思っています。今すぐにという話ではありませんが、完全養殖が確立された折には地域の専門店も積極的に関わって養殖をし、地域ごとに特色ある鰻が生まれていけば面白いのではないかと思っています」

[データ]
「うなぎ処 山美世(やまみせ)」
〒690-1407 島根県松江市八束町寺津
電話:0852-76-3198

渡部卓社長 のコピー.jpg

















*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中
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