「蒲焼店が考える“これから”」30 〜2014年12月15日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]
見田一郎氏
(うなぎ居酒屋しらゆき/東京都中央区)
『将来は“うなぎバー”で 鰻を新たなスタイルで提供出来れば』
今年も残すところ2週間余りとなった。後にも先にも“ニホンウナギ絶滅危惧種”登録のインパクトが強かった一年と言えるだろう。
「ニホンウナギの絶滅危惧種登録に関しては、やはり“うなぎはこれからどうなってしまうの?”という不安を持ったお客様が多かったですね。そのなかでも“もう、食べられなくなる”ということよりも、値段が上がって鰻は手の届かないものになってしまうのでは?“という不安の方が目立っていました。またそうした”絶滅危惧種登録“の影響か、昨年より、売り上げは上がりましたね。ちなみに9月にニュースでも流れた、”シラスウナギ池入れ20%削減“に関しては、私どもも構えていましたが、お客様の反応はほとんどなかったです」
2年後のワシントン条約締約国会議を控え、ウナギ資源保護が進み、養鰻業は届出制となり、シラスウナギの池入れ量も昨年の20%削減で合意に至った。
「近年、周知のようにシラスウナギは不漁で、ただでさえ採れていません。また6月にはIUCN(国際自然保護連合)がニホンウナギを絶滅危惧種に登録、さらに9月には”20%削減“という話になって、これまで以上に相場が高くなってしまうのではないか、という不安が強くありました。加えて、荷物の供給面がどうなるのかも懸念され、問屋さんに問い合わせしたほどですが、『当面は、大丈夫ですよ』と言われ、安心しているところです。
ただ、私どももそうですが、お客様も様々なニュースから”うなぎ=高い、あるいは採れない“とのイメージを抱かれているようで、『鰻の仕入れが大変ですね』とよく言われるようになりました」
資源問題も頭の痛いところだが、うなぎ職人さん不足もまた避けては通れぬ問題。
「弊店はオープンしてまだ4年余りですが、私自身、調理はもちろん行いますが、ホールに出て接客もしたかったですから、当初から、ウナギの調理が出来る人を定期的に募集していました。同時に“ウナギ調理もご指導します”とも掲げていたのですが、実際に入ったとしてもなかなか難しく、またウナギ業界の先行きが不透明だけに不安もあるのか、やはり、職人さんが入ってくるのは“奇跡”と言えるぐらいに現状は厳しいです。育成もしたいですが、そもそもそうした人材がいないのが実情だと思います」
ウナギ業界を取り巻く環境は一昔前と大きく変わっている。資源問題をはじめとした課題も山積するなか、どう今後を生き残っていくか。
「うなぎ蒲焼にウエイトを置くと、ただでさえ、仕入れ値が高い中ではなかなか利益が取れなくなってしまいます。私どものお店は“うなぎ居酒屋”という名前をつけているだけに、ウナギは無論ですが、美味しいお酒がたくさん売れるよう、またそれに合ったウナギの串ものを充実させています。回転率は決して良い方ではないですが、その分、お客様の満足度を高めていけるよう、より料理、サービス面には力を入れるようにしています。冬などオフシーズンには、ウナギ以外の商材などを築地で見て回ってもいますよ。
また今は“うなぎ居酒屋”として営業していますが、先行きは“うなぎバー”というスタイルで、例えば高価なシャンパンとかを取り入れ、かつ、鰻料理に関しても従来の“和”ではなく、フレンチの要素を取り入れたスタイリッシュな形でお客様に提供していくのもいいかもしれません」
[データ]
「うなぎ居酒屋 しらゆき」
〒104-0041 東京都中央区新富1-15-3
新富ミハマビル1階
TEL:03-6280-4524
*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中