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「蒲焼店が考える“これから”」47 〜2015年7月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


西村 卓代表取締役社長
(八ツ目や にしむら/東京都豊島区)

『貴重なウナギをいかに有効活用するか』

土用丑の日まで残り3週間弱。外食では一足先にうなぎメニューを導入するほか、コンビニ各社も相次いで土用丑向けウナギ弁当の予約を開始するなどムードも高まっている。昨年は、IUCN(国際自然保護連合)により、ニホンウナギが絶滅危惧種としてレッドリストに登録され、“ウナギが食べられなくなる”と懸念した消費者が蒲焼専門店に駆け込む場面が多かった。はたして今年はどうだろうか。

「今年は今のところ、パッとしていません。ただ、ここ豊島区では6月12、13の両日に、地域活性化のために“プレミアム付豊島区内共通商品券”(有効期限:半年間)が発売され、12日は1400万円、13日は600万円分がともに30分以内で完売しました。先日の父の日は、そうしたプレミアム商品券の恩恵もあり、相当、盛り上がりましたよ」

ところで、専門店業界にとって避けては通れぬ問題であるウナギ職人不足。

「弊店では、ウナギを捌けるのが30代1人、40代1人、そして50代は自身含め3人の計5人です。“10年経っても小僧”という話もありますが、うちでは時間が空けば、賄いで食べるから“と、よく裁かせたり、串を打たせたり、とにかく練習をさせていました。また人を入れる時は一人ではなく、二人いっぺんに採用するんです。すると互いにライバル意識が芽生えるのか、いい刺激になるようです。とある調理師学校では、1000人卒業する中で10〜20%が和食へ、そのなかでうなぎに行く人はほぼ0、という話を聞きましたが、とにかく少しずつでも仕事を覚え、うなぎを料理する楽しさを地道に実感してもらうしかないですよね。息子も継いでくれる話もしていますし、頼もしいです」

近年、シラス不漁による相場高から、多くのうなぎ蒲焼専門店では値上げを余儀なくされ、ウナギ離れも起きた。離れたお客を少しでも取り戻すための働きかけは?

「地道に出前用のチラシを配ったり、来店回数により、滋養強壮により八ツ目ホルゲンをプレゼントしたりしましたね。また新たなメニューの開発も考えています。3〜4年前に考案したうなぎ(佃煮/200円)のおにぎりも冬限定ですがテレビにも取り上げられ、好評です。ほかにも、ウナギの頭を素焼きにして圧力釜で圧縮し焼き上げたカブト(150円)、また骨せんべいも出しています。離れたお客様を呼び戻すのは無論、貴重なウナギをいかに有効活用するかも大切ですからね。今は。お年寄り・子ども向けに今『うなぎのハーフ丼』を提供しようか、思案中です」

最後に,ウナギ資源管理が業界上げて叫ばれている。将来、仮にニホンウナギがワシントン条約に掲載された場合、活鰻流通は今の18%にまでに抑えられるという試算もある。

「ワシントン条約に掲載され、ウナギの供給不安に陥った場合、うちではアナゴの扱いを増やすほか、せっかく備長炭を使っているので他の魚種の扱いも視野に入れています。一方で、今後に向けて全国各地のウナギ屋さんが一店でも多く、全蒲連(全国鰻蒲焼商組合連合会)に加入していただき、そのなかでお互いに情報を交換、新たなアイデア、対策などを生み出せればと思います。将来は、うなぎサミットなるものも出来れば良いなと思っています」

[データ]
「八ツ目や にしむら」
〒170-0002
東京都豊島区巣鴨3-34-2
TEL:03-3910-1071

西村卓 のコピー.JPG

















*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中
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