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「蒲焼店が考える“これから”」62 〜2016年2月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


四代目 八馬(はちうま)誠氏
(大塚 宮川/東京都豊島区)

『鰻という日本文化に携わる人間としてその価値を発信』

2016年に入り、早くも一ヶ月が経過した。前半のシラス漁の不調からか、活鰻相場も先月半ばに主要産地で相次いで値上がるなど、販売を取り巻く状況は芳しくない。気になる現在の専門店の売れ行きはどうだろうか。

「ここ数年、弊店では赤字が続いています。私自身は、昨年の11月に修業を終え、この大塚宮川に帰ってきて、現在は三代目の父と日本料理の板前と私の三人で調理場に立っています。価格の値上がり、景気の変化など、ここ10年で外部環境は大きく変わりましたが、そのことにより気づきもありました。赤字の一つの原因はうなぎの扱い方にあるということで、まずはこれを改善していくことが売り上げUPの鍵になると考えています」

近年、シラスウナギの不漁から、活鰻相場は高値安定となっている。ここ数年は、値上げを余儀なくされた多くの専門店も見受けられるが、お客を一人でも取り戻すために、貴店ではどのようなことを考えているのだろうか。
「『うなぎは高級品』今や世間の誰もが口を揃えてそう言うでしょう。だからこそ『鰻ってこんなに美味しいものだったんだ』とお客様におっしゃっていただけるお店にしたいと考えています。それが私の想いです。価格値上がり後、私のお店もお客様が減少しました。しかし、その一方で今現在も行列をつくっている鰻屋さんもあるのです。私はそのようなお店に通い、この『違い』は何かを研究し、答えを出しました。それは商売や鰻屋における本質にあるのではないかと思います。

その日の鰻はその日に捌き、炭に落ちるたれの香りでお客様を誘い、アツアツのご飯にフワッ、トロッの鰻をお出しする。当たり前の事なのかもしれませんが出来ていない部分もあります。ですから、私は三代目の父と毎日その事について話し合い、少しずつ当たり前の基準をあげていきます。『鰻を食べるなら大塚宮川へ行こう』そう言って選んで頂けるお店づくりを目指します」

ちなみに貴店が扱うウナギへのこだわりはどのようなものがあるだろうか。

「鰻は国産のみを扱っておりますが産地、季節、問屋様によってその状態は様々です。完璧な人間が存在しないように、完璧な鰻も存在しないのかもしれません。その中で私が大切にしているのは“『誰』から仕入れるか!“です。つい先日、生まれて初めて養鰻場を見学させて頂きました。私達は鰻がお客様に届く一番近いところにいます。だからこそこの鰻がどんな池で、どんな人に、どんな考え方で育てられたのかを知る必要がありました。『どんな鰻』ももちろん大切ですが、業界発展の為には私が見学させて頂いた養鰻場のように『愛、感謝、誠実さ』を持った養鰻場が増えたら素敵だなと思っています」

ところで今年9月にワシントン条約締約国会議が開催される。ニホンウナギの動向が気になるところだが、貴店はどのような考えを持っているか。

「それについては自分がコントロール出来ないものなので今のところ、対策は出来ていません。私の出来る事は、その貴重な鰻をお客様に美味しくお届けする事だと確信しています」

資源問題の一方、職人不足問題も昨今、大きくなっているが、これに関してはどのような見解を持っているか。

「鰻職人を含めた料理人という職業へのイメージの改善が必要だと考えています。その為に私が出来る事は積極的に外部にこの職業の素晴らしさを伝えていく事、そしてお店に入ってくれた若者を、命をかけて育てることだと思います。だからこそ、その時の為に伝えていく私が志を持ち働き、学び、成長する事を心掛けています」

最後に、鰻蒲焼専門店を取り巻く環境は、これまでと一変している。専門店にとって今後をどのように見通しているか。

「会社の質は、トップの考え方の質で決まると考えています。今後、鰻の生産や価格がどうであれ、私は鰻という日本文化に携わらせて頂いている人間としてその価値を発信していくと共に、お客様、取引先様、自社に対して『愛、感謝、誠実』を持って仕事をし、世の中に貢献できる事は鰻屋を目指します」

[データ]
「大塚宮川」
〒170-0005 東京都豊島区南大塚1-53-5
TEL:03-3945-1313

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*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中
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