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「蒲焼店が考える“これから”」40 〜2015年4月15日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


遠藤慎一代表取締役
(大観楼/仙台市青葉区)

『“大切な日に使える場所”としての存在感強めたい』

ニホンウナギが昨年6月にIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに絶滅危惧種として登録された。

「お客様の反応ですが、ニュースをきっかけに鰻を思い出して食べにきて下さった方が5日間くらい続きました。ただ、あとはいつもの日常にすぐ戻りました。夏場に向けての影響は、やはり活鰻価格上昇の要因を与えることになったと残念に思います」

お話しされたように、国内外の相場が上昇し始め、先行き不安が高まり始めた。

「もちろん価格が安いに越したことはありませんが、供給側がその主導権を握っているので弱小蒲焼店はどうすることも出来ません。せめて乱高下せず一定範囲の価格に落ち着くことを願うばかりです」

相場動向の一方、懸念される職人不足問題。また、ウナギのPRについてはどう考えているか。

「弊店は鰻と会席料理を扱っており、毎年のように新卒を受け入れて来ましたが、鰻職人希望者は6年前に1人、入ったきりです。しかしながら鰻の資源・価格問題に不安を覚え、鰻職人をあきらめてしまいました。新入生には必ず鰻部にも1年配属しマンパワー不足を補っています。一方、うなぎマーケットは確かに縮小している感があります。別に一生食べなくても困らない、という声もあります。料理に力を入れるのも当然ですが、店のサービスや設備にも投資をし、『大切な日につかえる場所』としての存在感を強めていきたいと思っております」

近年のシラスウナギ不漁、そして今シーズンも史上3番目の不漁に終わりそうだ。また、上昇し始めた相場動向など多くの問題も現出、鰻業界を取り巻く状況は大きく一変した。そのなかで、伝統食文化を担ってきた蒲焼店は今後をどう進んでいくべきか。

「経営方針における鰻屋の今後は前述したとおりです。さらに言いますと、ホテルや日本料理専門店には真似のできない名物料理=鰻という魅力もお客様はわかっておられますので、『つかえる場所』と『名物料理』、この2点を全うしていくことに尽きます。また、蒲焼店同士の交流を通じてたくさんのことを勉強させていただきました。都会はもちろん地方の店であっても支持されている店には必ず理由があります。その理由を簡単に教えていただける機会ですから、まさに宝の山だと思います」

ウナギ業界においてほかに気になる部分はどのようなところか。

「宮城県北部のある米農家は1kg5,000円で米を販売しています。それに比べたら、今の活鰻価格はとても安いでしょう。東北のみちのくの百姓が徹底的にこだわり、ストーリーを作って5,000円でも消費者が納得して買う米を作っています。私は何が納得できないかと言いますと、鰻の、黒くて長ければみんな同じ価格という状態が残念でなりません。せめて活鰻の等級つけを行っていただきたいものです」

[データ]
「大観楼」
〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町3-9-5
TEL:022-221-7575

遠藤慎一社長.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」39 〜2015年4月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


藤田宗篤代表取締役
(うなぎ 藤田/東京都日野市)

「生産者と蒲焼店の距離をもっと、ぐっと縮める事も大事」

ニホンウナギが昨年6月にIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに登録された。そのニュースのインパクトはかなりのもので、『鰻がもう、食べられなくなる』と危惧した消費者による“特需”から、ウナギ消費は大きく伸びた。現時点では、そうした“絶滅危惧種”による影響はないようだが、今シーズンの“シラス不漁”のニュースが今後、取り上げられた時に消費者が再び、どのような反応を示すか、気になるところだ。

「絶滅危惧種に登録されたことに対してほとんど反応はありませんでした。売れ行きは昨年の春からは概ね、各月10%〜15%アップしていまして、夏に向けての影響は現時点(今年いっぱい)でないと予想しています」

これまで動きのなかった国内外の相場が上昇し始め、先高感は一気に強まっている。資源問題をはじめ、相場動向からも目が離せない状況になっており、動向が気になるところだ。

「昨年はシラスウナギ漁が好調でウナギ資源が多少採れたので助かりました。しかし、今年のように次年度も、次々年度も採れないことがありうるので、一昨年の最高値を基準に商売を続けています」

ウナギ資源問題の行方が気になる一方で、懸念されているのが蒲焼店界の課題でもある職人不足問題。また、ウナギの販売促進に関してはどのようなことを考えているか。

「当店は、理念としてものづくりを通じての社会貢献、ものづくりを通じてのひとづくりと常々、考えています。ですから、近隣の他産業(建築業等)など人出不足の業種と連携して若い労働力の確保に努めています。また、販売に関しては地域の住環境にマッチした小回りのきく、オペレーションを行っています」

近年はシラスウナギ不漁により、大きくクローズアップされたウナギ資源問題。そして再び、動き始めた相場動向など、まだまだ多くの問題が目の前に立ちはだかったままだ。数年前に比べて鰻業界を取り巻く状況は大きく一変しているなかで、伝統食文化を担ってきた蒲焼店としてはこれからをどのように進んでいくべきなのだろうか。

「各鰻屋さんのビジョンはそれぞれ、違うでしょうが、当店は地域の様々な変化に対して微調整、改善し、近隣の子ども、大人まで幅広いニーズに対応していきたいと考えています。蒲焼店さん同士の交流よりも生産者と蒲焼店の距離をもっと、ぐっと縮める事も大事ではないでしょうか?」

[データ]
「うなぎ 藤田」
〒191-0062 東京都日野市多摩平3-7-4
TEL:042-581-2099

代表取締役 藤田宗篤ブログ用.JPG















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「蒲焼店が考える“これから”」38 〜2015年3月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


今野(いまの)利明代表取締役
(うなぎの館 天龍/長野県岡谷市)

「蒲焼の実演、活鰻との触れ合い、           市内の保育園に出向き活動」

2009年から4年連続のシラスウナギ不漁を強いられた。それを発端にニホンウナギは昨年、絶滅危惧種としてIUCNのレッドリストに掲載され、業界に大きなインパクトを与えた。

「昨年から、というよりはその前のニホンウナギの不漁から売れ行きは増えています。お客様サイドに立てば、報道等の情報に左右されると思います。しかしながら、店舗に来られるお客様で近況を気にされる方は少ないですね。食べている時くらいは状況を気にするより、うなぎを存分に味わっていただきたいですね」

昨年9月、東アジア4カ国地域で決定したシラス池入れ量の20%削減。またうなぎ養殖業は届出制から許可制に移行していくなど資源管理はより強化されていく。その一方で、注目されている今年のシラスウナギ漁は全体的に見ると芳しくなく、最終的に史上2番目の不漁となりそうだ。

「資源保護に少しでも役に立てばと思い、鰻の質が当店で使用したい品質に合っている時だけではありますが、通常の倍のサイズにアップして、1匹で2人前にしたりしています。お客様によってはそちらの太物を指定する方もおられます。しかしながら、微々たる量だと思いますので、少しでも早く人工養殖が確立されるといいですね。

昨年、決定した“シラスウナギ池入れ20%削減”については、資源であるうなぎがこのような状況ですので致し方ない事だとは思います。業種により感じ方にズレはあると思いますが、この削減部分が業界全体にどう影響していくのか、これからが問題だと思います」

ウナギ資源問題も頭の痛い問題が、その一方では各地で懸念される、蒲焼店界の課題である職人不足問題。

「うなぎのまち岡谷の会としてですが、毎年、うなぎ体験として市内の保育園に出向いて、蒲焼の実演、活鰻と触れ合うなどの活動をしています。面白い事に活動を始めてからは将来うなぎ屋さんになってみたいと多数の子どもが言ってくれるので有り難いです。そのなかから、一人でも多くの職人を確保出来ればと活動しています。ちなみに、時代の変化なのか、夜間の集客は落ちているように感じます。当店では天気が悪い夜間などは様子を見ながら、早じまいしています」

近年、続いたシラスウナギ不漁をはじめとする供給、相場高騰等、様々な問題が噴出している。鰻業界を取り巻く状況が一変しているなか、蒲焼店としてはこれからをどのように進んでいくべきか。

「どう進めばいいのか、正直、わかりません。自分で出来る事、考えられる事をやってみます。個店としては丁寧な仕事をし、それをお客様に提供し、食していただく、この当たり前のことをさらに強く感じています。こんな時だからこそ、同業者の力が集まれば、何かが変わるかもしれないですね。

私自身も蒲焼屋さんのLINEグループに参加させていただいていますが、このような同業者の交流はこれから重要になると思いますし、大きな動きになると信じています。皆さんで力を合わせていけば、何かが変わると思います」

[データ]
「うなぎの館 天龍」
〒394-0034 長野県岡谷市天竜町3-22-11
TEL:0266-23-0669

代表取締役/今野利明氏 ブログ用.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」37 〜2015年3月15日掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


土肥弘基常務取締役(当時/現・専務取締役)
(上野池之端 伊豆栄/東京都台東区)

「厳しい環境も本筋は変えず、             時代に合ったものを取り入れ、乗り越える」

ニホンウナギが絶滅危惧種としてIUCNのレッドリストに掲載され、まもなく9ヶ月。当時のメディアによる報道のインパクトは大きく、未だにその影響力を垣間みる事が出来る。

「昨年、絶滅危惧種の報道による、かけこみ需要はとにかく多かったです。“ウナギはこれからどうなるの?”そんな不安を口にするお客様も目立ちました。最近は、春節の影響から、中国や台湾からのお客様など外国の方も多く見受けられますし、オフシーズンにしては、たくさんのウナギを扱っていると思います。また最近ですが、お客様から“(うなぎ供給に関して)夏は大丈夫なの?”という心配の声を何度かいただいております。それだけに私共もお客様に現状をしっかり説明しなくてはと常々思っているところです」

昨年のシラスウナギ漁は幸いな事に近年にない豊漁に恵まれた。しかし、今年は全体的に見ると芳しくなく、昨年9月に東アジア4カ国地域で決定したシラス池入れ量も20%の削減が決定されるなど、これによって供給不安は再び、高まっている。

「さきほどの話と重複する部分もありますが、夏場の需要期に向けて供給面の不安は確かにあります。昨年、“20%削減”という話もありますが、ただ心配しても仕方ありませんし、弊社の職人が仕入れ先産地に電話して常に情報をとる一方、私どもも近いうちに産地にお邪魔し、話を伺おうかと思っています」

一方、頭の痛い職人不足問題。ウナギ業界に限らず、和食全般で慢性化しているという。

「ウナギ業界だけではなく、今は“和食”の職人を志す職人自体が少なくなっています。私どもでは習志野調理師専門学校と提携し、若手職人の発掘に力を入れています。まず、和食を目指す子のなかから、ウナギも手がけてくれる子を探しています。また地元、台東区では公立中学校の“職場体験”というのがありまして、私共でも男の子は出前、板場を、女の子にはホールを体験していただくのですが、なかには“高校生になったら、バイトさせていただいて良いですか?”という子もいます。とにかく、わらをもつかむ思いで職人探しについては地道に働きかけています」

また、職人さんの育て方についてはどうだろうか。

「我々は常に調理場にいるわけではないので、親方、先輩等に育ててもらっていますが、私どもも出来る限り、若い子の話を聞くようにしています。また、若い子には余暇をしっかり、とらせるようにしています。今まさに遅い冬休みを取っている子もいます。

ただ、そのなかでももともとガッツある子はいますし、言う事もはっきり言ってきます。我々経営者サイドも、その回答を中途半端にせず、しっかり出すようにし、揚げ足をとられないように注意しています。これからも根気強く育てていき、彼らをしっかり守っていく気持ちを持ち、愛社精神も伸ばしてあげるいけるよう、努力しています」

近年は前述のような職人不足をはじめ、シラス不漁による相場高騰、そして資源問題など、ウナギ業界を取り巻く環境は激変している。

「一昔前に比べれば、私どものメニュー価格も確かに大きく変わっています。ただ近年は、土日などの休日は20〜30代の若い世代、また女性客だけのグループも目立っていますし、ありがたいことです。今後も“鰻屋“という業態、”本筋”は絶対に変えずにその時代に合ったものを上手に取り込んでいきたいですね。

最近では『食べないと飲まナイト』というイベントにも参加させていただきながら、地元商店街など近隣のお店とも助け合い、積極的に前面に打って出るようにしています。またLINE、FacebookなどSNSも活用し、ウナギに関する情報などを上手に収集出来ればと思います」

[データ]
「上野池之端 伊豆栄」
〒110-0005 東京都台東区上野2-12-22
TEL:03-3831-0954

土肥弘基常務/伊豆栄 ブログ用.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」36 〜2015年3月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


濱 守代表取締役
(濵丑川魚店/長野県岡谷市)

「お客様に今も昔も変わらぬ、感動いただける蒲焼提供を」

ニホンウナギはすでに、IUCN(国際自然保護連合)によって、レッドリストに絶滅危惧種として登録されている。メディアがこれを大きく取り上げたことから、一部消費者のなかには “もううなぎが食べられなくなる”との懸念もあった。しかし結果的にはPRにもつながったようで、各店では多くの人出となり、シーズン中は賑わいをみせたようだ。来年にはワシントン条約締約国会議が控えており、再び、メディアによって大きく取り上げられると見られ、動向が気になるところだ。

「昨年はウナギに関する話題がマスコミ等で取り上げられることが例年に比べて多かったせいか、食事に来られるお客様の数、売り上げ共に上がりました」

メディアの取り上げ方次第では大きく左右される販売だが、結果的には良い方向へと流れた。しかし、“絶滅危惧種登録”という事実は消せず、それに伴い、ウナギ資源保護の動きが活発化している。周知のように、水産庁は昨年9月、シラスウナギ池入れ量を前年の20%削減する事を決めている。ただし、“法的拘束力”がないだけに片手落ちな面も否めない。

「資源保護に関しては、ウナギの実態をもっと把握した上で有効な対策をウナギに関わる業界全体で取り組む必要があると思います。20%削減については、あまり意味のない数字のようにも思えますが、資源保護の第一歩としての意味はあるかと思います」

資源の問題、そして頭の痛いのがこれまで再三、話題としても取り上げられている職人不足問題。

「職人の育成、確保は当店でも今直面している問題です。蒲焼を作る仕事は奥が深く面白い仕事だと思いますが、それもうなぎあっての事で、完全養殖が実用化されなければ、将来性のない職と思われても仕方がないかもしれません。経営面や販促について、岡谷では昔からうなぎがよく食べられてきたようです。しかし、毎月一回地元のお客様向けにうなぎの特売をしたり、学校給食にうなぎを使ってもらったりしている事で、うなぎを食べる習慣がより根付く一因になっていると思います」

“将来”の見通しがたたない状況では確かに難しい問題と言えるが、資源と同様、改善していかねばならない問題だろう。そうしたなかで蒲焼店としてはどうしていくべきか?また最近ではFacebook等ネットを通じて“うなぎ募金活動”の輪が広がっているように、SNSも上手に活用し、横の繋がりを広げるとともに、様々な活動にしても全国に働きかける動きも散見される。

「今も昔も変わらずお客様に感動して頂けるような蒲焼を提供し続けることが大事だと思います。SNS等の交流は色々な方の意見や知識を知ることができ、ありがたいです」

[データ]
「濵丑川魚店」
〒394-0035 長野県岡谷市天竜町3-1-8
TEL:0266-22-2531

DSC07711 のコピー.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」 35 〜2015年2月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


三澤純也氏
(清水屋川魚店/長野県岡谷市)

『鰻屋同士、そして問屋との繋がりを大切にしていくべき』

ニホンウナギは昨年、IUCNがレッドリストに絶滅危惧種として登録した。多くのメディアがこれを大きく取り上げ、一部消費者のなかには、“もう、うなぎが食べられなくなる”との懸念、一方で“絶滅危惧種を食べるとは何事か”といった声まで聞かれた。来年はワシントン条約締約国会議も控えており、ニホンウナギ資源の動向に、より注目が集まっている。

「ご存知のように、ニホンウナギが昨年、IUCN(国際自然保護連合)によって絶滅危惧種としてレッドリストに掲載された、件のニュース直後は、多くのお客様から、『もう、ウナギは食べられなくなるのか?』、『今後、店頭の販売価格が大幅に上がるのか』などの質問がありました。その影響が大きかったのか、夏の土用丑の日は例年より忙しかったです」

一般メディアが一斉に報道する事への影響力はやはり、大きかった。不幸中の幸いか、これらの報道は逆にPRにもつながり、客足は伸びたようだ。ただ、“絶滅危惧種登録”の影響は大きく、水産庁は資源保護ヘの動きを加速、昨年9月には、シラスウナギ池入れ量を前年の20%削減する事を決めた。

「ある程度の資源保護は仕方ないと思います。20%の削減は今後、鰻業界にどれくらいの影響を及ぼすのか、想像がつかないので何とも言えません。業界末端の蒲焼専門店としてはこの結果を受け入れるしかないと思います」

一方、ウナギ資源問題は無論、蒲焼専門店界としては避けては通れない、ウナギ職人問題がある。将来、仮に資源が回復したとしても、調理をする人がいなければ話にならない。

「こちら、岡谷市の地元でも後継者不足で閉店したお店が何店舗かあります。弊店も親が引退した後は、職人を雇わざるを得ないと思っていますが、当てがないのが現状です」

ウナギ業界全体は近年、めまぐるしく変化している。かつてない相場高騰、そしてウナギ資源など、未曾有の問題が目立つ。

「今後、ウナギ業界も厳しくなっていくのでまずは鰻屋同士、そして問屋とのつながりをより大切にしていくべきだと思います。そのためにもSNSを情報交換の場として、活用する事も非常に良いと思います」

[データ]
「清水屋川魚店」
〒394-0021 長野県岡谷市郷田2-1-45
TEL:0266-23-2002

三澤純也社長 のコピー.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」34 〜2015年2月15日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


藤田将徳代表取締役
(うなぎ藤田浜松店/浜松市中区)

「『味』『サービス』『雰囲気』を提供し続ければ、   お客様は必ずついてきてくださる』

これまでにないほどインパクトが大きかったのは、ニホンウナギが絶滅危惧種として昨年、登録されたことだろう。IUCN(国際自然保護連合)日本事務局曰く、“ランクは下がっても、リストから外れる事はまずない”とのことで、いかにこのリスト入りが重大なものかを再認識させられた。

「メディアをはじめ、お客様にも本当に多く聞かれた昨年、やはり皆様の関心は今後うなぎを食することが出来なくなるのではという不安でした。その中で食べられなくなる前に食べておこうという需要が非常に多かった一年だったと思います。しかし、本来の需要とは異なる売り上げ増に、戸惑いもありました」

ニホンウナギの絶滅危惧種登録とともに、より資源保護への動きが加速した。東アジア4カ国地域におけるシラスウナギ池入れ量は前年の20%削減で合意、先日4〜5の両日はその四カ国地域で非公式協議を行ったばかり、6月に引き続き、資源保護にける法的拘束力についてなど議論する流れだ。

「当店では、資源確保という理由で6年前から『天然うなぎ』の販売をやめました。お客様からは、やはり“天然うなぎ”を食したいという意見が多く、その度に年々資源が少なくなって来ていることを説明し、ご納得いただいています。やはり需要があれば資源捕獲の原因になると。もちろん、お客様に喜んでいただきたいのですが、それがいずれ蒲焼業界にも影響すると考えたからです。

“20%削減”につきましても、現状を考えると致し方ない事だと思います。その決められた資源の中で、今後どのようにお客様に喜んで頂けるかを考えることが企業努力なのではないでしょうか」

ウナギ資源の他に解決していかなければならない問題、それはウナギ職人不足。

「職人不足はいつの時代も抱えている問題だと思います。その中で5年、10年後を見据え、常に先手を打っていけることが理想ですが、なかなか人件費などを考えると難しいところもございます。その中で、当店では若手の育成に力をいれ、地元の若者を採用し、職場環境を整え、先ずは働きやすい環境を作り(労働時間、休日など)離職率を抑えることにより、現状では職人を確保出来ていると思います。

やはり、経費削減の一番手っ取り早い方法としては人員削減ですが、逆に今いる従業員の負担が増し、労働環境が悪化することが、後にお客様に影響し、さらに売り上げ減少という負の循環を起こしてしまうのでは意味がありません。ですから、当店の『適正人員』を把握し、そのなかで経費を抑えていける部分と、逆に経費を掛けなければいけない部分を見極めて経営しております」

取り巻く環境は大きく様変わりするなか、蒲焼専門店としてはこれから、どうしていくべきか。

「鰻は日本の食文化です。この日本文化を絶やすことなく代々伝えていかなければなりません。しかし、近年鰻の値段が高騰し、蒲焼も手軽に食べられる金額ではなくなってきました。ただ、値段が上がってもその店を愛してご来店いただけるお客様がいらっしゃいます。そんなお客様のためにも満足する『味』『サービス』『雰囲気』を提供し続ければお客様は必ずその味や店のファンになり、ついて来て頂けると思います。

その基本を忘れず、常にお客様の立場になって日々問いただしていけばお客様の満足につながり、売り上げにもつながると信じております。これからも、日本の食文化に携われることを誇りに思い、日々精進していきたいと思います」

[データ]
「うなぎ藤田浜松店(本店)」

〒433-8113 静岡県浜松市中区小豆餅3-21-12
TEL:053-438-1515

うなぎ藤田藤田将徳代表.jpg

















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「蒲焼店が考える“これから”」33 〜2015年2月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


鈴木淑久代表取締役社長
(あつた蓬莱軒/名古屋市熱田区)

『お店の特色、長所を伸ばし、             他業界に負けない魅力の業界に』

シラスウナギシーズン真っ只中だ。豊漁となった昨年とまではいかないものの、国内池入れ量を見る限り、まずまずのペースと言えよう。しかし、その一方でこのウナギ資源に関しては近年、“4年連続のシラスウナギ不漁”、昨年のIUCNによる絶滅危惧種指定、シラスウナギ池入れ量が前年の20%削減を余儀なくされるなど、ウナギ資源包囲網が進んでいる。この4、5日には「ウナギ資源の保存及び管理に関する法的枠組みの設立の可能性についての検討のための非公式協議」が日本、中国、台湾、韓国が出席する中、行われ、来年にはワシントン条約締約国会議も開かれる予定だけに、ウナギ資源問題からますます目が離せない状況だ。そんなウナギに対する注目度が高まる中、消費者間でも多くの反応が見受けられた。

「様々な出来事があるたびに、お客様の反応は多少ありましたし、新聞やテレビといったマスコミの取材なども多くありましたね。その際には、間違った情報や認識が広がらないように、我々、専門店の責任として、いままで以上に時間をかけながら、理解していだくよう、対応いたしました」

ウナギ資源包囲網が周知のように進むなか、前述したワシントン条約締約国会議が来年、開かれる。水産庁でもウナギ資源保護を急ピッチで進めているなかで、養鰻業は昨年11月に届出制に、シラスウナギの池入れ量も東アジア4カ国・地域(日本、台湾、中国、韓国)では前年の20%を削減することで合意に至っている。

「未来の種となるシラスウナギの保護に動く事は理解出来ますし、獲り過ぎに歯止めをかけるには良いかと思います。獲られなかったシラスの将来の子どもたちがまた戻ってきてくれることを祈るばかりです」 

ウナギ資源を取り巻く現状は近年、厳しくなっていることは周知の事実だが、対して、鰻蒲焼専門店を切り盛りしていく上で避けて通れない、ひとつが職人問題。これといった打開策もなく、ただただ時が過ぎていくのが現状だ。

「幸い、私どもの店には将来、有望な若者が集まってくれ、それぞれ成長していることを感じています。経営面についてですが、最近は価格の変動もなく、落ち着いているだけに、数年先送りしてきた設備投資に力を入れております」

ウナギ業界はここ数年で大きく様変わりしている。まさかの“シラスウナギが4年連続の不漁”、そしてニホンウナギが絶滅危惧種指定、相場暴騰などかつてない事態が起きている。とくに資源問題は現時点では、ウナギの完全養殖の実用化が確立されておらず、解決の糸口も見つからないまま、手探りの状態が続いている。

「それぞれのお店に特色があると思いますので、それぞれの長所を伸ばせば、今後も他の業界に負けない魅力のある業界になっていくと思っています。また交流についてはお互いに顔を合わし、食事でもして、その人の味を感じ、知り合うほうが、私には合っているかな?」

[データ]
「あつた蓬莱軒」

〒456-0043 名古屋市熱田区神戸町503番地
TEL:052-671-8686

鈴木淑久氏 ブログ用.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」32 〜2015年1月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


高橋明宏代表取締役社長
(うなぎ割烹 高橋屋/埼玉県杉戸町)

『職人確保は“ここで勉強すれば間違いない”       と思わせる飲食店舗にすること』

ニホンウナギは昨年、IUCNにより、絶滅危惧種としてレッドリストに登録された。それによる影響力はことのほか、大きかった。

「お客様の反応は、“資源が無くなるイコール値段が上がる。値段が上がるから食べられなくなる”ことを気にされていたお客様が多いように感じました。もっと言えば、日本人がうなぎを食べられなくなっても生活が不便になるわけではないので、鰻の蒲焼、白焼きは確かに特別なものではあるのですが、IUCNの一件で日本には他に選択出来る美味しいものもたくさんあるのだと改めて痛感いたしました」

近年、天然ウナギの漁獲規制、シラス池入れ量の削減など、急ピッチで進むウナギ資源保護。また、河川など、ウナギの生息環境の改善を望む声も強まっている。

「天然ウナギを前面に押し出して、ご商売されている店舗様は、非常に厳しい状況にあると思われますが、その捕獲、また消費者への提供の規制を考えるのも、ひとつの“ウナギ資源保護”への一つの案ではないかと考えます」 

一方、専門店が頭を悩ますのは何も資源問題だけではない。昨今、ようやく取りざたされるようになったうなぎ職人問題、“少子高齢化”のなか、発掘、育成が遅々として進まないのが現状だ。

「ウナギ職人不足であるなら、育てなくてはいけません。となりますと、これから育てていかなくてはならない世代は『ゆとり世代』。彼らは、ゆっくりと自分の時間を最優先に考える世代と一般的に言われています。飲食業界も拘束時間を短くし、9時間労働を目指し、二部制にするなどの努力や改革をしなくてはならないと思っております。

そのためにもっとも必要なことは売り上げです。夕方のニュース番組などで一品を原価度外視の安値にする店舗などが世の中に目立ちすぎますと、消費者が“本当は安く出来るのではないか”と勘違い致します。そうなりますと、私たち、売り手が望む、価格設定も出来なくなってしまいます。弱気な価格設定により、経営を圧迫する事になってしまいます。

二番目に必要な事は店舗のブランド力だと思います。このブランド力は、ミシュランガイドとまでは言いませんが、食べログ高得点など、ここで勉強すれば間違いないと思わせる飲食店舗にすることが、若手や職人確保に不可欠かと考えております。そのためにも流行りの食べ物や味わい、食感など時代に合わせた調理も必要かと考えています。もし鰻業界、飲食業界に関係がない家庭で、自分の子供が鰻屋で勉強したいと言ったら反対すると思います。その理由は、資源の先行きが危ぶまれているから、あるいはクジラみたいになるかもしれないからです」 

最後に、フェイスブック、ラインなどSNSにおける蒲焼店さん同士の交流についてはどう、思っているのだろうか。

「個性的な方々が多く楽しい業界なんだと想像できます!SNSで皆さんと仲良くさせて頂くのに慣れてきたら、こんな質問もできたらと、、、。先日、銀座松屋のメガネ屋さん『アランミクリ』で10年前くらいのビンテージ作品なんですが、凄く斬新なメガネがありました。店員さんに「10年前でこんな斬新な作品?誰か?購入されましたか?、と冗談で伺ったら、“関西の鰻屋さんが買われました!”と。おっ流石、うなぎ業界の先輩と思いました!私は、そんな業界の先輩にお会いしてみたいので、そんなお伺いも、気軽に出来るような環境のSNSになればと願っております」

[データ]
「うなぎ割烹 高橋屋」
〒345-0036 埼玉県北葛飾郡杉戸町杉戸3-10-6
電話:0480-32-0021

高橋屋高橋明宏社長.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」31 〜2015年1月10日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


長友隆之代表
(入舟/大分県大分市)

『他文化との組み合わせも考え、            興味を持っていただけるお店作り』

ウナギ資源に関して、試練の年と言える新年が幕開けした。昨年は、IUCNの絶滅危惧種指定など、ウナギ資源に関する報道は例年以上に多かった。

「ウナギ稚魚の減少の報道直後は『今日、ウナギはありますか?』との問い合わせが目立ちました。“ウナギの仕入れがなくなる”と思われたのではないでしょうか。一方で、地元報道機関から取材の申し込みもありました。しかしながら、お客様の持たれる印象への不安も考えた上で、取材は丁寧にお断りさせていただきました。2014年を振り返ってみますと、前年に比べて忙しい年となりました」

来年は業界が動向を注目しているワシントン条約締約国会議が開かれる。そうしたなか、近年はウナギ資源保護が急ピッチで進んでおり、養鰻業は昨年11月より届出制となり、シラスウナギの池入れ量も前年の20%削減で合意に至っている。

「シラスウナギ池入れ量の20%削減について、私はポジティブに捉えています。ウナギの希少価値が上がることで、今後はブランド化されていくのではないでしょうか。新たな販売形態として、価値を付加することも考えています。しかし、当店のような家族経営の小規模店は、極端な納品量の減少があるのではないかと懸念しているところです」 

ウナギ資源に関しては当然、今後も商売する上で避けては通れない問題の一つだが、一方で職人問題も蒲焼店にとっては資源と並んで、頭の痛い問題のひとつだろう。

「ウナギ職人の人手不足には、当店も本当に頭を抱えています。当店は私の趣味でもありますワインを提供し、求人誌に掲載したところ、ワインに興味を持った問い合わせを数件ほどいただきました。これからは、ウナギに興味を持たせるための“キッカケ”を考えることで、人手不足の解消を図っていきたいと考えています」

ウナギ業界を取り巻く環境は、このわずか数年で一変したと言っても過言ではない。商売の元となる“ウナギ資源”が、それまで漸減傾向であったとはいえ、急激に採れなくなったことはまさに晴天の霹靂と言えよう。そうした大きな問題に直面するなか、どう乗り切っていくべきか。

「これからの鰻屋は、他の文化との組合せも考え、お客様に興味を持っていただけるお店づくりをしていく事が大切なのではないかと思います。うなぎ料理の伝統を生かしながら、 新たな食べ合わせや様々な企画を考えていきたいと思います。また、SNS などを活用した同業種の方々との交流は、心強く励みになります。今後も引き続いて交流が出来ればとても嬉しいです」

[データ]
「入舟」

〒870-0851 大分県大分市大石町 5-1-1
TEL:097-549-5765

長友さま のコピー.jpg

















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「蒲焼店が考える“これから”」30 〜2014年12月15日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


見田一郎氏
(うなぎ居酒屋しらゆき/東京都中央区)

『将来は“うなぎバー”で                鰻を新たなスタイルで提供出来れば』

今年も残すところ2週間余りとなった。後にも先にも“ニホンウナギ絶滅危惧種”登録のインパクトが強かった一年と言えるだろう。

「ニホンウナギの絶滅危惧種登録に関しては、やはり“うなぎはこれからどうなってしまうの?”という不安を持ったお客様が多かったですね。そのなかでも“もう、食べられなくなる”ということよりも、値段が上がって鰻は手の届かないものになってしまうのでは?“という不安の方が目立っていました。またそうした”絶滅危惧種登録“の影響か、昨年より、売り上げは上がりましたね。ちなみに9月にニュースでも流れた、”シラスウナギ池入れ20%削減“に関しては、私どもも構えていましたが、お客様の反応はほとんどなかったです」

2年後のワシントン条約締約国会議を控え、ウナギ資源保護が進み、養鰻業は届出制となり、シラスウナギの池入れ量も昨年の20%削減で合意に至った。

「近年、周知のようにシラスウナギは不漁で、ただでさえ採れていません。また6月にはIUCN(国際自然保護連合)がニホンウナギを絶滅危惧種に登録、さらに9月には”20%削減“という話になって、これまで以上に相場が高くなってしまうのではないか、という不安が強くありました。加えて、荷物の供給面がどうなるのかも懸念され、問屋さんに問い合わせしたほどですが、『当面は、大丈夫ですよ』と言われ、安心しているところです。

ただ、私どももそうですが、お客様も様々なニュースから”うなぎ=高い、あるいは採れない“とのイメージを抱かれているようで、『鰻の仕入れが大変ですね』とよく言われるようになりました」 

資源問題も頭の痛いところだが、うなぎ職人さん不足もまた避けては通れぬ問題。

「弊店はオープンしてまだ4年余りですが、私自身、調理はもちろん行いますが、ホールに出て接客もしたかったですから、当初から、ウナギの調理が出来る人を定期的に募集していました。同時に“ウナギ調理もご指導します”とも掲げていたのですが、実際に入ったとしてもなかなか難しく、またウナギ業界の先行きが不透明だけに不安もあるのか、やはり、職人さんが入ってくるのは“奇跡”と言えるぐらいに現状は厳しいです。育成もしたいですが、そもそもそうした人材がいないのが実情だと思います」

ウナギ業界を取り巻く環境は一昔前と大きく変わっている。資源問題をはじめとした課題も山積するなか、どう今後を生き残っていくか。

「うなぎ蒲焼にウエイトを置くと、ただでさえ、仕入れ値が高い中ではなかなか利益が取れなくなってしまいます。私どものお店は“うなぎ居酒屋”という名前をつけているだけに、ウナギは無論ですが、美味しいお酒がたくさん売れるよう、またそれに合ったウナギの串ものを充実させています。回転率は決して良い方ではないですが、その分、お客様の満足度を高めていけるよう、より料理、サービス面には力を入れるようにしています。冬などオフシーズンには、ウナギ以外の商材などを築地で見て回ってもいますよ。

また今は“うなぎ居酒屋”として営業していますが、先行きは“うなぎバー”というスタイルで、例えば高価なシャンパンとかを取り入れ、かつ、鰻料理に関しても従来の“和”ではなく、フレンチの要素を取り入れたスタイリッシュな形でお客様に提供していくのもいいかもしれません」

[データ]
「うなぎ居酒屋 しらゆき」
〒104-0041 東京都中央区新富1-15-3
新富ミハマビル1階 
TEL:03-6280-4524

見田一郎様 ブログ用.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」29 〜2014年12月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


湧井浩之取締役
(うなぎ割烹 大江戸/東京都中央区)

『厳しい時こそ、お客様に“利益”を供与すること』

今年は“ニホンウナギ絶滅危惧種”が一番の話題。

「IUCNがニホンウナギを絶滅危惧種に登録、公表した6月。後半から“例年と違うなあ”という雰囲気を感じました。とくに夜の予約が目立ち、早い段階で満席になる日が多かったです。例年、7月第一週にもなれば一度波は引くのですが、今年は違いました。丑までずっと右肩上がりで、その好調さはお盆前まで続きました。数々のニュースで結果的にPRにつながったようです。“絶滅危惧”については、とにかくお客様を安心させるよう努めました」
 
2年後のワシントン条約締約国会議を控え、ウナギ資源保護が進む。

「”シラス20%削減について、2016年のワシントン条約を控えているだけに、水産庁の動きは良かったと思っています。ただ、“大豊漁年の20%削減”は、資源保護の効果は低いと思いますし、ワシントン条約締約国会議へ向けた一種のポーズともとれます。しかし、私どもはこれからもウナギを扱い続けなければなりませんし、生産者も養鰻業を継続出来るよう、頑張ってもらいたいと思います」

ところで資源問題と同様、うなぎ職人さん不足が大きく立ちはだかる。

「正直、頭が痛いです。私どもでは鰻職人5人を抱え、上は65歳、下は40歳、将来のためにも対策を練りたいと思っていますが、まずひとつは人材登用するための(資金の)余裕がないです。仮に募集をかけても今度は、人材がいない問題も。ひとつの対策としては集団就職等を考えていく事ですかね。あとは“和食”が世界無形文化遺産に登録された事で、海外の人がより注目する中、外国の方を受け入れる体制も必要になってくるでしょう」

これからをどう生き残るか。

「厳しい時こそ、お客様に“利益”を供与する、これは弊店で代々、言い伝えられていることで、まさに今のウナギ業界がそのような状態にあります。私どもでは、お客様を離さないために値上げも最小限にとどめました。長く続いているお店は、お客様に何らかの“利”を与えているのだと思いますから。一方で料理面、サービス面など細かいブラッシュアップを欠かしてはいけないし、怠れば進化はありません。マーケットが縮小する中、いかに勝ち組に残っていくか、臨機応変に対応していきたいですね」

最後にSNSなどの交流、活用の仕方については。
「つかえるツールは有効に活用するのは良いと思います。LINEは、親しき仲での他愛もない話にはとても向いていますね。それ故少し軽い感じもします。また実名登録の必要がないですし、“トーク”もどんどん流れていってしまうので、ディスカッションには不向きかと。一方、Facebookは、実名登録、素性、背景がわかるなど、リアルがベースにある交流が可能であり、またタイムラインも比較的流れ難いので、ディスカッションにはこちらの方が向いていると思いますね。

それからFacebookページ(一般向け)、公開グループ(一般の方も入れる)と非公開・秘密のグループ(クローズド)を使い分けることで、情報発信、交流・議論の場の棲み分けが可能かと。いずれにせよ、交流を深め、地域ごとにまとまり、ゆくゆくは全国でひとつにまとまれば良いですね」

[データ]
「うなぎ割烹 大江戸」
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町4-7-10 
TEL:03-3241-3838

湧井浩之取締役 ブログ用.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」27 〜2014年11月15日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


代表取締役 松本清氏
八ツ目や にしむら(目黒)/東京都目黒区

『値下げることは広告・宣伝につながる』

今年も早いもので残すところ、1ヶ月半となった。振り返ればうなぎの話題は多かった。

「様々なニュースの報道で、いわゆる“うなぎがもう、食べられなくなる”といった不安要素による需要もあって、今年の売れ行きは目に見えて良かったですね。加えて、自分自身は“1にも2にも、PR”と常に考えているので、メディアの取材も積極的に受けていて、テレビを見た既存のお客様の間で“ここの店、知ってる!”など、PR効果をさらに高めたことも売り上げ増になったもう一つの要因ではないでしょうか」

ここ4年間、シラスウナギ不漁で相場高騰が続き、苦しい状況を強いられたが、最近は9、10月と仕入れ価格は相次いで下がっている。メニュー価格についてはどう、考えているのだろうか。ちなみに同店の店先には“仕入れ値が下がったら、価格を下げて販売したい”といった内容の張り紙が貼られている。

「メニュー価格については、店頭でも以前から告知していますように、仕入れが高いときは価格を上げさせていただいたし、下がった時も同様に下げたいとは思っています。ただ、当初の予想に反して下げ幅が少ないのは誤算でした。理想を言えば、あと1割ほど仕入れ価格が下がれば、(値下げを)考えたいですね。メニュー価格を下げることによって、お客様の信頼を得られると同時に、広告・宣伝にもつながると思っていますから。張り紙している関係でお客様からは“まだ下げないのかい?”と冗談交えて話をされる時もありますが、目くじら立てて言う人はいらっしゃいませんね」

一方、業界を覆うウナギ資源保護問題についてはどうだろうか。

「先般、水産庁が取り決めた“シラスウナギ池入れ直近の20%削減”については、資源保護の観点からも大賛成です。ただし、規制によって逆に、シラスウナギの裏取引が横行するのではという懸念も正直あります」

また、ウナギ職人不足問題については?

「うちで抱えている職人は、40代がひとり、20代が3人で、職人さんの件についてそれほど心配はしていません。営業時間も7時までと早い方で、拘束時間も短い方だと思います」

最後に、取り巻く環境が大きく変化するなか、これからの鰻屋はどう進んでいくべきか?

「あまり、奇抜なことをやらず、うなぎ単品の扱いは無論、基本に忠実にこれまでと同様に進んでいくしかないと思います。できる限り、割きたて、炭火での焼きたてを実践、仕込みのタイミングも早すぎないよう注意し、常にお客様が満足するような美味しいウナギを提供していくだけです。今も昔も変わらず、“どうすれば、お客様に美味しい、良いウナギを提供出来るか”ということを常に考えています。またSNSもうなぎやさん関連のFacebookをいつも拝見していますし、自身でもブログを書いていますよ。ちなみに名古屋の『うな豊』さんがFacebook通じて他のうなぎやさんのPRに尽力されていることに頭の下がる思いです」

[データ]
「八ツ目や にしむら(目黒)」
〒153-0064 東京都目黒区下目黒3-13-10
TEL:03-3713-6548

松本清社長 ブログ用.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」26 〜2014年11月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


四代目 橋本正平氏
(日本橋はし本/東京都中央区)

「鰻食文化継承には一人でも多く            鰻を召し上がっていただくこと」

今年の鰻業界、とにかく話題が多かった。

「シーズン中はやはり“うなぎは食べられなくなる?”、あるいは“また相場は高くなるのか?”などテレビでニュースが流れるたびにそうした声は多く、またここ2〜3年は、お客様から“天然ウナギはないの?”といった問い合わせがめっきり、なくなりましたね」

ちなみに現在の客足は?

「10月までは昨年よりも活気のある営業でしたが、一番下のレギュラーサイズの鰻重が3000円以上という事に常に頭を悩ませてきました。勿論、シラス漁目前にまだ見えてこない来年以降の、十分にあり得る再高騰に対しても慎重にならざるを得ませんが、今、考えている価格調整(値下げ)の理由には、一人でも多くの人に鰻を召しがっていただくことにあります。先行き、不安材料は山のようにありますが、可能な限り、活鰻相場の変動に柔軟に対応し調整する事で、お客様との距離を少しでも縮めたい。同時に専門店として鰻への姿勢をアピールし、ひいては鰻食文化の継承に繋げていきたいと考えています。引き続き情報を集め、目玉商品や限定販売商品作りと並行しながら鰻食文化を今後どのように伝えていくかを具体的に実行したい」

ところで先月30日に全日本持続的養鰻機構が設立、そしてウナギ養殖業が届出制になるなど、ウナギ資源保護・管理の動きが進んでいるが。

「個人的には、ウナギ完全養殖が商業ベースに乗ることで資源はじめ、多くの問題が改善されると思います。ですから、そうした機関に寄付するのが一番良いのかな、と思います。その寄付金捻出の一つの案は、ウナギが流通する段階で“ウナギ税”のようなものを課す事。間近のシラス漁が振るわず、相場が高騰すればこの案もかなり厳しいですが、シラスが採れれば、早急に実現出来ればと思います」

“シラスの池入れ量20%削減”に対してどう捉えているか。

「決してネガティブに捉えていません。ウナギ資源を守るための政策としては良いことだと思います。相場高騰の懸念もありますが、我慢するしかないですし柔軟な対応が出来るよう、準備しておくことも必要ですね」

一方、ウナギ職人不足問題については?

「意欲ある若い子が私どもの店にもいますが、昨今のウナギ資源問題から“手に職を持っていれば将来、困らない”的な話は正直、なかなか言えません。こうした状況下だけに、いかにうなぎの魅力を伝えるかが一段と大切になっていきますね。職人さんが少なくなれば、必然、鰻文化の継承も出来なくなります。“自分の時間が欲しい”若い子たちが多い昨今、労働時間の見直しなど、若い子が育つ環境を整えていく事も重要ですね。また若者の食に対する注目度をもっと高めるために、同時に多くの若い子たちに鰻を召し上がっていただくためのアピールすることも不可欠です」

これからの鰻屋はどう進んでいくべきか?

「基本的に、“鰻を召し上がってくれる方”がいらっしゃらないとはじまらない。前述のように鰻文化の継承も考えると、思った以上に影響力の大きいSNSを上手に活用し、土用丑の日、また各記念日ごとに様々な形でPRすべきだと思います。とくにYouTubeなどで、ウナギの生態、資源の実態、またうなぎ専門店の現状などを映像で流すのもいいかもしれませんね」

[データ]
「日本橋 はし本」
〒103-0028 東京都中央区八重洲1-5-10
TEL:03-3271-8888

四代目・橋本正平氏 のコピー.JPG
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「蒲焼店が考える“これから”」25 〜2014年10月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


渡辺安良取締役社長
(つきじ宮川本店/東京都中央区)

『資源保護、出来る事は”天然ウナギを買わない、    扱わない“』

今年も残すところ、2ヶ月余となった。秋も深まり、肌寒い日もあるなど、夏の好商いが懐かしいぐらいだ。オフシーズンのなか、例年のごとく消費も落ち込んでいる状況だ。今年は振り返れば、業界内外を震撼させた”絶滅危惧種“の報道によるインパクトはとにかく大きかった。

「やはり、“ウナギがもう食べられなくなる”という危機感を持ったお客様が多く見受けられるなど、駆け込み需要はあった感じでした。とくにIUCN(国際自然保護連合)がレッドリストにニホンウナギを絶滅危惧種として登録した6月頃から忙しくなりました。その後、7、8月と続き、また9月は“20%削減”という例のニュースの影響もあり、“天然ウナギは食べられないの?”など心配するお客様もいらっしゃり、6、7,8、9月、そしてこの10月もまずまずの動きを見せています。当初、夏の反動が懸念されていましたが、それほどまでの落ち込みはないです」

ところで今月30日には、全日本地蔵的養鰻機構の設立総会が行われるなど、ウナギ資源保護・管理の動きが急ピッチで進んでいる。

「天然ウナギを買い上げてそれを放流するなど様々な働きかけが進んでいますが、私ども専門店としてはやはり、天然ウナギを“買わない”“扱わない”ぐらいですね。昨今のウナギ資源保護の動きからも、向こう10数年は天然ウナギの扱いも難しくなりそうですね。私どもでは4〜5年前ぐらいまで天然ウナギを扱っていたのですが。天然はピンキリでしたが、当時はやはりお客様には喜ばれましたね」

ウナギ資源の保護・管理が進む一方、その影に隠れてしまっているのがウナギ職人不足問題だ。

「私ども本店に6人、他店も含めると合計20名の職人さんを抱えており、平均年齢は50代です。札幌店では毎年10代の若い職人を入れていましたが近年は集めづらくなっています。将来、職人が少なくなり、お店の規模縮小などの危機感はありますが、正直、対策が進んでないのが現状です。人、職人を育てるのはお金がかかりますし、“会社規模でしっかり育てる”ことを考えると鰻屋ではなかなか難しい面もあります。またここ数年は、シラスウナギの漁がどうなるか?ウナギ完全養殖の商業化となるのか?それぞれ、状況を見ながら体制を変えていく事も大切です」

最後に今後、鰻屋はどのような未来をむかえるのだろうか。

「前述しましたが、シラスウナギ漁の件も合わせて、近年のウナギ資源の不安定さを考えると、これまで以上に採算を重視していくことで、こじんまりとした商売になってしまうのかな、とふと思ったりもします。具体的に“ウナギ資源はこれだけ。だから価格はこの水準になる”といったように“商売としての形がある程度、構築されてしまい、商売の形も様変わりしてしまう懸念があります」

LINE、Facebookなど SNSを通じた鰻屋さん同士の交流については?

「全国各地の鰻屋さんが一堂に会す事は大変ですが、そうしたツール等のやり取りは容易でしょうし、場合によっては言いたい事も気軽に言えそうで良いのではないでしょうか」

[データ]
「宮川本店」
〒104-0045 東京都中央区築地1-4-6 宮川本店ビル
tel:03-3541-1292

渡辺安良社長 のコピー.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」24 〜2014年10月15日掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


矢野昌宏取締役社長
(鰻 やっこ/東京都台東区)

『鰻仕入れ価格に資源保護費上乗せ』

秋も一段と深まり、完全なるオフシーズンに突入している。先月半ばより、夏の大商いがウソかのように売れはピタッと止まっている。しかも今月に入り、毎週末の台風襲来が余計に足かせとなっている。

この時期になり、季節柄もあってか、ウナギに関する話もやはり少ない。ただ、今年は”シラスウナギ好漁“からはじまり、6月のIUCN(国際自然保護連合)、9月の”シラスウナギ池入れ20%削減“のニュース等、要所要所でウナギが大きく取り上げられたことで、結果的にPRにつながった。

「当時は、“ウナギが食べられなくなる?”といった声はほんの少し、聞かれた程度でそれほど騒ぐ程でもありませんでした。とにかく、一連のニュースによってウナギの露出度は高まり、客足が伸びましたね。ただ、秋を迎え、売れ口が落ちていくなか、夏の反動がどの程度になっていくのか、そこが心配ですね」

ところで、ウナギ資源保護については先般、東アジア4カ国地域でシラスウナギの池入れ量を直近の20%削減することで合意したように、ウナギ資源管理は着々と進んでいる。

「先般、行われた全国鰻蒲焼商組合連合会の情報交換会でも資源保護の一環として“天然ウナギを扱わない”ということなど、私どもも出来る限り、協力していければと思います。他の専門店グループ等では、水産総合研究センターへの募金活動が行われていますが、例えば、そうした“資源保護費”を活鰻料金に上乗せし、徴収していくのもいいかもしれません。そして、それらをウナギ完全養殖商業化、あるいは親ウナギの放流向けに寄付していく、それがひとつの流れです」

一方、ウナギ資源とともに今後、大きな問題となっていくと見られる職人問題。

「私どもではウナギ職人さん三人を抱えています。年齢は50〜60代です。ただ、ここ4年間、シラスウナギ不漁による相場高騰等から、経営面ばかりに目がいき、正直、職人さん問題の対策はまったくしていないのが現状です。これから、改めて考えていこうと思っていますが、まずは若い人たちが働きやすいような環境を整えていくことですね。例えば、私どもでは通しで営業をさせていただいていますが、“休み”時間を設けるとかですね」

また、経営面の工夫はどうだろうか?

「私どもでは純米酒専門の酒屋さんと協力し、売り上げアップのため、料理とお酒の組み合わせを活用しています。ちなみにウナギの仕入れ値に関しては、確かに値下がってきているので一息はつけています。しかし、これから始まるシラスウナギ漁によっては再び、相場が反転しないか、内心は不安で一杯です」

今後、鰻屋としてはどうしていくべきだろうか?

「常に美味しい鰻料理を提供していくことと同時に、サービス、接客の部分をさらに強化していきながら、鰻文化の継承に力を入れていくことですね」

[データ]
「鰻 やっこ」
〒111-0032 東京都台東区浅草1-10-2
電話:03-3841-9886

矢野昌宏社長 ブログ用.jpg

















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「蒲焼店が考える“これから”」23 〜2014年10月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


四代目 秋本斉氏
(うなぎ麹町 秋本/東京都千代田区)

『“時間を持ちたい”若い子が多い』

振り返れば今シーズンは例年以上にメディアによるウナギの露出度は高かった。実際に売れ行きにはどのような変化が出ているのだろうか。

「昨年2月の環境省によるニホンウナギの絶滅危惧種登録の時から、”ウナギはなくなるのか?“という懸念の声はすでに目立っていました。また今年6月のIUCN (国際自然保護連合)の件では”ワシントン条約“の単語が出てきてから”本当に食べられなくなる“と心配するお客さんも多くなりました。そんなメディアの相次ぐニュースでしばらくウナギを食べていなかった方、また普段、スーパーのウナギ加工品を食べていた若い子も”せっかくの機会だから“と来店されたケースも多かったようです。逆に”20%削減“のニュースはそれほどインパクトが無かった感じでした」

昨今のウナギ資源保護に関してはどうだろうか?

「前述した“20%削減”に関して、いい悪いは別にしても“みなでこうしましょう”と資源保護についてひとつの流れを作った事は良いことだと思います。ちなみに個人的には利害関係があると思いますが、しばらくは“天然ウナギ”を採りすぎないことがひとつの資源対策ではないかと思います。もちろん、シラスウナギについても“20%削減”の件で間接的に抑制されていくことも大事ですし、資源保護のためにはお互い、痛み分けをしなくてはいけないですね」

一方、資源問題と同様、先行き懸念が高まるウナギ職人さん問題についてはどうだろうか。

「聞いた話だと、最近は“給料は安くても良いが自由な時間を持ちたい”という若い子が多いらしいです。確かにウナギ屋さんに限らず、飲食業は拘束時間が長いですからね。そうした受け入れ態勢を、今後は我々も改善していかなくてはいけませんね。一方で、地方がとくに求人が少ないようで、調理師斡旋所の人たちにはそうした地方とのパイプも作っていただきたいと思います。そうした両面で将来の“ウナギ職人”発掘、育成のために進めていければと思います。もちろん、お店自体の魅力、“うなぎ”という業種の魅力をアピールしながら、働きやすい環境を作る事も大事ですね」

一方、SNSにおける蒲焼店の交流については?

「普段、お会い出来ない各地の蒲焼店の方々とSNSを通じて交流する事でその人、そのお店のモチベーションも高まるし、またいい加減な仕事も出来ないなと刺激を受けます。シナジー効果もあってよいのではないでしょうか」

これからの鰻屋はどう進んでいくべきか?

「基本は変わらず、うなぎ文化継承のために基本的な事をしっかりしていくこと。ただし、時代の変化に合わせて,SNSなどを活用し、広く“うなぎ”の魅力を伝えていく事も大切ですね。お問い合わせの電話も『HPみているんだけど・・・』とホームページを見ている方がほとんど。今後も、新しいツールがあれば積極的に活用していきたいと思います。またSNSを通じた全国各地の鰻屋さんとの交流も良い刺激になりますし、参考にさせていいただています」

[データ]
「うなぎ麹町 秋本」
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-4-4
tel:03-3261-6762

うなぎ秋本ブログ用.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」22 〜2014年9月25日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


伊藤秀俊常務取締役
(町田双葉/東京都町田市)

『ウナギ資源保護管理には               各業態がお互いに自制すること』

今シーズンは例年以上にウナギの露出度は高いが、売れ行きはどうなのか。

「シラスウナギ漁、絶滅危惧種の報道など、ポジティブ、ネガティブ関係なく、メディアに取り上げられる事は結果的にウナギのPRにつながっています。去年に比べても “あれ!?”と驚くほど客足は伸び、また8月も月末まで好調さを持続しました。自分自身、以前は放送局の下請け会社で働いていまして、メディアの影響力を改めて見せつけられましたね。この9月も例年より、忙しくさせていただいていますし、先日の“20%削減”の報道に関しても、そろそろお客さんの反応が出てくると思われ、10月も例年と異なった動きが予想されますね」

一方、昨今取り沙汰されるウナギ職人の問題についてはどうだろうか。

「現在、私どもでは社員としてウナギ職人5人を抱えています。2人は50、60代ですが、残り2人は20代、もう一人は40代。女将は7〜8年前から、すでに先行きの職人問題を考えていましたね。だからこそ、当時まだ10代だった2人を職人として迎え入れ、現在に至っています」

近年はシラス不漁による相場高騰から、どこも厳しい経営を強いられていると思うが?

「厳しいときだからこそ、小さな事から節約を図るようにしてきました。百貨店では営業時間の調整による人件費を抑える事は出来ません。しかし、仕入れに関しては常に工夫しています。例えばこのエリアのお店には出ていない高価なお酒の種類を用意し、売り上げアップにつなげています。ただウナギに関しては品質、金額ともより良いものを仕入れるようにしています。安いものを入れようとすれば品質が安定しませんからね」

一方、SNSにおける蒲焼店の交流については?

「普段、お会い出来ない各地の蒲焼店の方々とSNSを通じて交流する事でその人、そのお店のモチベーションも高まるし、またいい加減な仕事も出来ないなと刺激を受けますし、シナジー効果もあってよいのではないでしょうか」

近年は、“ウナギ資源保護、管理”が業界の命題になっている。これからの鰻屋はどう進んでいくべきか?

「シンプルに言えば、お客様に常に喜んでもらえるようなサービス、商品を提供し続けること。職人さんには“商品は作品”だということを徹底しています。それは焼き、そして盛りつけなどに全ての面においてこだわりを持ち続けてほしいからです。また“ウナギ資源”問題が近年、大きく取り上げられるなか、業界全体が“ウナギを召し上がってくれる人”に目を向けるべきだと思います。また資源保護に関しても、誰かに責任を転嫁するのではなくそれぞれの業態がお互いに自制することです。

例えば、シラス業者なら“採り過ぎない”、養殖業者なら“育てすぎない”、問屋なら“集めすぎない”、加工メーカーなら“仕込みしすぎない”。そして私ども蒲焼店なら、無駄を出さないよう”仕入れすぎない“ように、それぞれが自制しなければ業界は衰退していくと思います。うなぎを生業としている人は誰でも鰻文化を背負っており、次世代につなげる使命があると思います」

[データ]
「町田双葉」
〒194-8550
東京都町田市原町田6-12-20
小田急百貨店町田店9F スカイタウン
tel:042-726-8844

伊藤秀俊常務/町田双葉.JPG

















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「蒲焼店が考える“これから”」21 〜2014年9月15日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


三代目 岩本公宏氏
(日本橋いづもや/東京都中央区)

『目の前の仕事を愚直に追求する』

今夏のウナギ業界は“ニホンウナギの稚魚好漁”、“レッドリスト登録”など大きな話題を呼んだが、今夏を振り返ってどのような変化、影響があったか。

「“うなぎが食べられなくなるの?”、といった声はやはり多かったです。なかには、“ウナギは養殖されているのに、なぜ絶滅危惧種に指定されたの?”といった声もありました。業界では当たり前の事でも一般消費者はそうではないのでわかりやすく、端的に説明させていただきました。また“今年は稚魚が採れたんでしょ?”という問い合わせも多かったです。それだけ多くの話題を振りまいたことでウナギの露出度も高まり、客入りは例年以上に多かったです。一時、メニュー価格の値上げで減少していた若年層も幾分、戻ってきています。“高い、高い”と煽った昨年のメディアの報道に比べると、今年はまったくの逆の展開でした」

先般のニュースで、完全養殖クロマグロの稚魚量産化に民間大手が参入、先行き期待感が強まっている。一方、業界関連となる完全養殖ウナギの商業化についてはどうだろうか。

「完全養殖ウナギの商業化に向けて研究、開発が進んでいますが、マグロの例にもあるように民間大手が参入し、多額の予算が投資されれば、商業化はもっと早まるのではないかと思います。ちなみにウナギ資源保護については近いうちに行われる東京鰻蒲焼商組合青年部の会合で、私どももどのように向き合っていくべきか、意見交換を行う予定にしています」

資源問題と並び、課題のひとつであるウナギ職人問題だが昨今、どんな状況にあるのか?

「求人を出してもほとんど若い人は入ってきません。それこそ“5年に1人”、“10年に1人”のレベルです。それよりも、やはり“縁”だと思います。“若い子がいるんだけど・・・”そうした話が最初のきっかけとなりますね。求人するよりも、そうしたきっかけがこれまで多かったように思えますし、実際に調理師学校に入り、ウナギ職人を目指している人は少ないと思います」

実際、どのような指導を心掛けているのか。

「今いる若い職人さんに対して昔のように辛い、孤独な思いをさせず、家族のように接し、苦しさの先には楽しいこともある事をわかってもらえるよう指導しています。職人としては無論、人としての教えもしっかり伝えていくよう努めています。また、人は誰でも細かく注意されるのは苦手だと思いますから、私はあえて若い職人さんにはお客さんがアップしたブログの画像、コメント等を見てもらいます。そこで自身が作った料理を見る事で反省すべき点は反省出来るよう“気づかせる”ようにしています。この職人という仕事は確かにきついですが、手に職を持つ事はかけがえのない財産になることを伝えていきたいですね」

鰻屋はこれからの時代、どう乗り切っていくべきか?

「鰻屋も、ウナギ資源と同様、“絶滅危惧種”と言っても過言ではありません。それだけに、楽をせず当たり前の事を当たり前のように、目の前にある仕事を愚直に追求していくこと。原料にこだわり、常に良い仕事を心がけ、その日の原料はその日に出す事を常に心がけています。こんな厳しい世界だからこそ、お客様には心地よくいられる環境を提供し続ける事も大切ですね」

[データ]
「日本橋いづもや 本店」
〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町3-3-4
tel:03-3241-2476

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*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中
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「蒲焼店が考える“これから”」20 〜2014年9月5日号掲載〜 [蒲焼店が考える“これから”]


四代目 高木 康晴氏
(うなぎ 源氏/東京都文京区)

『うなぎ職人のスターを生み出す事もひとつ』

ニホンウナギの稚魚好漁、絶滅危惧種に登録など例年以上に話題を振りまいた。今夏を振り返り、どうだったか?

「今夏は例年以上に良かったですよ。例年、土用丑の日を間近にウナギに関するニュースが多くなるのですが、とくに今年は “シラスウナギ好漁”、そして“IUCNがニホンウナギを絶滅危惧種に登録“とインパクトも大きく、暑さも後押しした事で例年以上にウナギが売れました。金額ベースで言えば大体130〜140%ぐらいです。仕入れ値も昨年同時期に比べ、1000円/kg前後、下回り久しぶりにいい商売が出来ました。うちでは”絶滅危惧種“の事よりもシラス好漁による”値下げ“を気にする方が目立っていました」

ちなみに売れ行きに変化は出ているのだろうか。

「私どもではトータルで600円の値上げをさせていただきました。その結果、鰻重は1400円から2000円となった“竹”よりも、2400円から3000円となった“極上”の方がよく売れるようになりました」

一方、昨今はウナギ資源管理問題が大きくクローズアップされている。今月半ばには日本、台湾、中国、韓国などニホンウナギの資源に係る国際会議も開かれる予定だ。

「ウナギ資源保護に関しては思うところはいろいろありますが、なかなか“個人”では動けず、歯がゆい部分もあります。昨今は“天然ウナギを採るな”という傾向がとくに突出している感じがします。しかし、これだけではなく他にも要因があると思いますし、もっと冷静に資源問題を見つめ直す事も大切かなと思います」

一方、職人不足問題に対してはどうだろうか。

「自身も調理士会に8年、所属していました。当時は会主催で、服部栄養専門学校など調理師学校で講習会を何度か開きましたが、結果は厳しかったですね。あのような働きかけはとても良い事ですが、若い子たちがついてこない。うなぎ職人とは努力を重ね、一歩ずつ段階を踏んでいかなくてはならないのですが、それが今の若い人たちの性に合わないんでしょうね。うなぎ調理自体に興味を示す学生さんも多かっただけに、うなぎ職人のスターを今後、生み出す事もひとつの方法ですよね。人を惹き付けるうなぎ職人が誕生する事で後に続く若い人たちも増えていくのだと思います」

かつてない問題が山積する蒲焼店業界。今後は、どのように進んでいけば良いのか。

「基本に忠実、丁寧な仕事を心がけ、美味しい鰻重をお客様に提供し続けることしかないと思います。鰻屋さんにいらっしゃるお客様は基本的に舌が肥えていて厳しい。だからこそ、しっかりしたものを出さないと二度とお店には来てくれません。多くのお店がそうした思いで仕事に臨めば良いのではないでしょうか」

ちなみにSNSについてはどうだろうか。

「いろいろなウナギ料理の写真、動画も載せられ、刺激を受ける事もあります。実家の鰻屋に戻り、一人仕事をしていると自分の調理に対して口を挟む人もいないので、そうした意味でSNS は“刺激”になって良いですよね。ただ、直接お会いしていろいろとお話し出来た方がなおさら良いと思いますね」

[データ]
「うなぎ 源氏」
〒113−0021
東京都文京区本駒込4-42-3
tel:03-3821-1006

うなぎ源氏ブログ用.jpg

















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